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きょうだい間のトラブルは、根が深い。親が差をつけて接してきたために不仲となる例もあれば、大人になってから配偶者や相続が原因で揉める例もある。関係を断ち切った当事者に、決断までの苦悩と、いまの思いを聞いた。レイコさん(仮名)が縁切りを決めた訳は(取材・文=上田恵子)

自他ともに認める、両親の“掌中の珠”

きょうだいとの絶縁を決めた人たちには、必ず引き金となる決定的な出来事がある。しかし絶縁された側は、その理由を理解できていないことが多い。

レイコさん(75歳)は、親の愛情格差を根に持った兄から絶縁された。不動産業を営むレイコさんは、兄2人、姉1人の4人きょうだいの末っ子。自他ともに認める、両親の“掌中の珠”だったという。

「私は親に溺愛されて育ちました。上の3人は欲しいものがあっても我慢する生活だったのに、私は何でも買ってもらえた。正直、親の愛情を重荷に感じることすらあったくらいです」と、幼少期を振り返る。

「実家は北海道ですが、きょうだいのうち長兄以外は、東京に家庭を持ちました。ある時、次兄が48歳で白血病を発症。両親は治療費の援助のために実家を売却することにしたものの、田舎なので売れても二束三文にしかなりません。そこで私は勤務先の不動産会社に実家を600万円で買い取ってもらい、それを私がローンで購入するという策を講じたのです。私が家主になれば、両親もそのまま実家で暮らせますから」

残念ながら次兄は、その600万円を役立てる前に亡くなった。そして数年後、実家は土地開発のため、市に1000万円で買い取られることが決まる。ところが、これが長兄との確執の引き金になってしまったのだ。

「私はそのお金でローンを返済。残金は両親ときょうだいに分けてあげました。でも長兄から『額が少ない』と猛烈に抗議されたんです。もともと私ばかり親に贔屓されるのを不快に思っていたところに、長兄を差し置いて家のことに手を出したのが気に障ったのでしょう。長年のうっぷんが爆発したかのような怒り方でした」