「お金貸しなさいよ、儲かってるくせに!」
父親が亡くなると、レイコさんは母親を東京に呼び寄せて5年間一緒に暮らし、見送った。けれど長兄との関係は修復できず、母の遺骨を父と同じ墓に埋葬することはおろか、墓参りをすることすら許してもらえなかったという。
「家族のために良かれと思ってやっても、なぜか兄の機嫌を損ねてしまう。それでも盆暮れにはお米を送り、長兄の息子が就職で上京すると聞けば世話をしたりと、私なりに精一杯心を砕いてきました。すると2年前に、長兄の妻から電話がかかってきたんです。お礼でも言われるのかなと思っていたら、『お金貸しなさいよ、儲かってるくせに! 親の遺産もあるんでしょ?』と強い口調で責められて。結局、言われるままに200万円を送金しました」
半年後に再び義姉から無心されたが、今度は断った。理由は、自身の息子から、「たとえ身内でも『2度目はない』ときちんと断らないと、相手のためにならないよ」と諭されたからだ。
「それ以降、お中元やお歳暮を送っても、送り返されてくるようになってしまいました。姉からは『もうお兄さんにかまうのはやめなさい。まあ、あなたは生まれた時から恵まれた星の下にいるからね』と言われます。幸い私には経済的な余裕がありますし、親に愛情深く育てられたせいで困った人を放っておくことができない。だから兄とも、どうにかして仲直りしたいんです」
今は2度目の無心を断ったことを後悔しているというレイコさん。次に義姉から連絡があったら、すぐにお金を渡そうと心に決めている。
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血を分けたきょうだいだからといって、必ずしも良好な関係を築けるとは限らない。今回話を聞いた人たちのように、「関係を断つ」という選択肢があってもいいのだ。断たれる側はつらいだろうが、最優先すべきは、自身の平穏な人生なのだから。