AIに奪われない仕事って何だろう
重松 AIが人間の仕事を奪うのではないかとも言われていますが。
羽生 そういう面はあるでしょう。でも一方で、AIが新たに生み出す仕事もたくさんあると思います。棋士という私の職業について言えば、50年後、存在しているかどうかはわからない。量の面では、AIは24時間休まずに指し続けることができます。それを人が見て楽しい、面白いと感じるかどうか、そこが存在意義や存在価値です。大切なのは、AIの働きを見る人間がどう受け取るか。人間の感性が次第にAI寄りになっていくとどうなるか、だと思います。
重松 将棋ファンは、対局に「復活なるか」とか「因縁の対決」とか、人間ドラマとしての面白さを感じています。
羽生 将棋ソフトでは評価値(形勢判断を示す数値)も出ますけれど、お互いにミスをしない試合が面白いかといえば、そうでもない。たくさんミスをした泥仕合のほうが面白い場合もあります(笑)。言い訳っぽくなりますが、人間社会では、完璧すぎるのもつまらないと言われたりしますから。
重松 AI時代のヒトの仕事について、新井さんはどうお考えですか。
新井 私は2011年から「ロボットは東大に入れるか」というAIプロジェクトを手がけています。
重松 「東ロボくん」ですね。
新井 AIにできること、できないことを解明するのが目的でしたが、各教科の勉強を続けた東ロボくんは、ついには全国の大学の7割で、合格可能性80パーセントという判定を得ました。
重松 学力としては、相当に高い。人間の強力なライバルになる実力をもっているということですね。
新井 確率と統計に基づいて計算することは得意ですから、そういった仕事はAIに代替されていく。ホワイトカラーには、ものすごくダメージが大きいですよ。