ヒトの言葉を話さないが、瞳のパターンや動きで人間に感情を伝える

 

「役に立たない」が必要になる

重松 最後に、AIとのつきあい方をお二人にうかがいます。さっきから、部屋の隅でラボットが呼んでいますが(笑)、キュイーン、というあの可愛い声は、なんとも言えないものがありますね。

新井 まさに、“余韻”ですよね。しゃべらなくて弱いロボットが、私は好きで。たとえば、犬を飼いたいと思っても、自分は高齢だし最後まで面倒をみきれるのかなと考えて、躊躇してしまう。でも、孤独やさみしさは人間をダメにするもの。そういうときにこんなAIロボットがいることで、クオリティ・オブ・ライフが少し向上するのかな、と。

重松 役に立たない、ということがこれからは必要になる。

羽生 私は、AIの技術がこれから進んでいったとき、人間の脳を理解しないといけない場面がでてくると思うんです。なぜかというと、結局、小さいエネルギーで大きな処理をすることを目指すようになるのですが、その一番いいモデルは人間の脳だから。

新井 そうそう。

羽生 もちろんAIの研究は進んでいきますが、同時に人間の脳はどういう仕組みになっているのか、人間とは何か、ということがやがて問われる。

新井 人間の脳はエネルギーをそれほど使わないのに、いろいろなことができる。不思議ですよね。汎用性が高いのは、AIじゃなくて人間なんです。

羽生 何か突出しているわけじゃないけど、そこそこ適当にできる。これが生命の本質なのかもしれませんね。


おしゃべり余話
「主従」「対立」ではなく


お手数ですが、上と前のページに戻って、ラボットと向き合う羽生さんと新井さんの笑顔をあらためてご覧あれ。「AIがテーマの座談会」で、こんなにも無気に童心に帰った出席者の姿を見ることができるなんて……。司会者として、すっかり感動してしまいました。

「主従」の関係だけでAIと人間を捉えると、どうしても対立があおられがちです。こんな時代だからこそ、お二人の笑顔が教えてくれるものは多いのでは?