イラスト:曽根恵
離れて暮らす親の老いが目立つようになると、そろそろ介護について考えておかないとと思う方も多いでしょう。しかし往々にして、「その時」は予期せぬタイミングでやってくるもので──。思いがけず親との同居生活になだれ込んでしまったという、3組の家庭の事情と同居後の試行錯誤を聞いてみました。まずは会社員の加藤明美さんのケースです(イラスト:曽根恵)

留守中に義母が倒れた!

「こんなに早く義母と同居するとは思っていなかったんです」と語り始めたのは、加藤明美さん(39歳・会社員)。章介さん(ともに仮名)と結婚したのは8年前のこと。翌年、夫の実家から車で15分ほどの場所に家を新築した。

「義父は夫が幼い頃に他界していて、義母は女手ひとつで一人息子を育てあげたんです。そのせいか夫はとても母想いで、いつかは同居したいという思いがあったのでしょう。新居の1階には義母用の部屋を作りました。でも、義母自身は気ままに暮らしたいと言って一人暮らしを続けていたのですが、80歳を迎えた昨年の夏、脳梗塞で倒れてしまって。しかも、私たちの海外旅行中に……。なんとか自力で救急車を呼んで一命はとりとめたものの、左半身に麻痺が残りました」

義母は元の暮らしに戻りたいと強く望んでいたが、一人では何もできない状態だった。

「義母の住まいはそのままにして、わが家で少しの間暮らしてみませんか、と説得したのです」

もとより同居を前提に建てた家だったため、バリアフリーの環境は整っていたのだが……。

「一緒に住もうと言ったのは私たち。でも実際、私の心の準備は整っていませんでした。夫婦共働きなので、昼間は誰が義母を看るのか、お風呂の介助は誰がするのかなど、決めなくてはいけないことが山積み。子どももまだ小さくて手がかかるし、考えるほどにパニックに陥ってしまったんです」