足腰が弱り、気軽に外出できない。伴侶を亡くして暮らしに虚しさを感じる。ちょっとした日々の不便を解消できない。そもそも、コロナ禍で人に会いにくい──。高齢になるほど、日常のあちこちに小さな不安の種が増える。周囲の人々との支え合いで解消している人たちに話を聞いた。2組目は、一般社団法人「えんがお」の取り組み。世代間交流を通して、高齢者の生活支援をしている。(取材・文=古川美穂)
世代間交流によって不便を解消
「Zoom」の画面の向こうには、マスク姿の若い男性と年配の女性がソーシャルディスタンスを取って並んで座っている。
「最近楽しいこと? うーん、何もないねえ」と女性がこちらの質問に返答すると、男性が「そういう時はお世辞でもいいから、僕らが来る時って言わなくちゃ」「はいよ(笑)」。仲の良い祖母と孫のような掛け合いが、風通しのよい関係性を感じさせる。
男性は栃木県で活動する一般社団法人「えんがお」の代表、濱野さん。隣に座る大久保イキ子さん(88歳)は利用者の一人だ。
「えんがお」は世代間交流を軸に、さまざまな地域活動を展開している。柱になるのは買い物代行や外出同行など細かなニーズに応える高齢者の生活支援だ。
濱野さんによると、「お年寄りが冬用布団を自分で出せず、寒いのを我慢して夏掛けで寝ていたとか、リモコンの電池が換えられず何ヵ月もエアコンの暖房を消せなかった、という話を頻繁に耳にします。支援の手が届きにくい小さな日常の不便も、積み重なると大変なストレスです。それを世代間交流を活用しながら少しでも解消していけたらと思い、活動しています」
濱野さんはもともと作業療法士をしていた。地域活動の現場では、骨折した高齢者が退院後に一人で家に閉じこもるうちに体が弱り、再び骨折したり認知症になって病院に戻ってくるのを見聞きしたという。そこで濱野さんは「家に帰っても一人ぼっち」という環境を誰かが変えないと本当の解決にならないと感じ、「えんがお」を立ち上げた。
大久保さんのお宅には週に1回、高校生や大学生のスタッフとともに掃除のために訪問している。