NPO理事でスタッフの門間大輝さん(右)と一緒にソフトクリームを食べる大久保さん。交流の時間を楽しみにしているという(写真提供:NPO法人えんがお)

掃除の先生として、いろいろ指導をしてもらう

「私も若いころは何でも自分でできたけど、腰が曲がって無理になってしまったので、濱野君たちに助けてもらっているの。若い人の掃除の仕方を『そうでなく、こうやるのよ』といちいち叱るから、口うるさい婆さんだと思われていますが、そうじゃないの。若い人に教えているのよ」と大久保さん。

これに濱野さんも「今の子はフローリングワイパーのシートのつけ方も知らなかったりする。だから大久保さんには掃除の先生になってもらい、掃除機は畳の目に沿ってかけるとか、いろいろ指導をしてもらっています。一方的に支援する・されるの関係ではなく、ギブアンドテイクが成り立っていることで、長く付き合いを続けていける」と補足する。

大久保さんは夫と、同居していた次男を亡くし、長らくひとり暮らしをしていた。高齢になったため数年前に長男と同居を始めたが、忙しくてあまり家にはおらず、ほとんど会話もないという。

「今の大久保さんは同居家族がいるので公的支援が限定されます。そういう制度の狭間のニーズもすくい上げる必要があるのです」と濱野さん。

「大久保さんは厳しいけれど、若い子を大事にしてくれる人。どんな子の名前もちゃんと覚えて呼んでくれるんです。今の若い人は能力があっても自己肯定感が低い子が多いので、自分のことを覚えてもらえるだけですごく喜びます」

大久保さんは一人でいる時、「えんがお」で出会った若者たちのことをよく考えるという。

「来てくれた子のことは忘れません。一番最初に私がお世話になったのは福祉大学の学生さん。ときどき、あの子は元気かな、この子はもう結婚したかな、今はどこに住んでいるかな、と考えています。頭をさび付かせないためにも、思い出すのはいいんですよ」

年齢を超え、互いを思い支え合う姿があった。

 


ルポ・コミュニティでの役割が、独居に希望をもたらす
【1】お弁当配布にコミュニティカフェ…一人暮らしの高齢者で助け助けられる関係を
【2】高齢者の生活支援をするのは、高校生や大学生のスタッフ。ギブ&テイクの関係で
【3】190戸中70戸が60歳以上の一人住まい。団地コミュニティカフェが行う関係作り