掃除の先生として、いろいろ指導をしてもらう
「私も若いころは何でも自分でできたけど、腰が曲がって無理になってしまったので、濱野君たちに助けてもらっているの。若い人の掃除の仕方を『そうでなく、こうやるのよ』といちいち叱るから、口うるさい婆さんだと思われていますが、そうじゃないの。若い人に教えているのよ」と大久保さん。
これに濱野さんも「今の子はフローリングワイパーのシートのつけ方も知らなかったりする。だから大久保さんには掃除の先生になってもらい、掃除機は畳の目に沿ってかけるとか、いろいろ指導をしてもらっています。一方的に支援する・されるの関係ではなく、ギブアンドテイクが成り立っていることで、長く付き合いを続けていける」と補足する。
大久保さんは夫と、同居していた次男を亡くし、長らくひとり暮らしをしていた。高齢になったため数年前に長男と同居を始めたが、忙しくてあまり家にはおらず、ほとんど会話もないという。
「今の大久保さんは同居家族がいるので公的支援が限定されます。そういう制度の狭間のニーズもすくい上げる必要があるのです」と濱野さん。
「大久保さんは厳しいけれど、若い子を大事にしてくれる人。どんな子の名前もちゃんと覚えて呼んでくれるんです。今の若い人は能力があっても自己肯定感が低い子が多いので、自分のことを覚えてもらえるだけですごく喜びます」
大久保さんは一人でいる時、「えんがお」で出会った若者たちのことをよく考えるという。
「来てくれた子のことは忘れません。一番最初に私がお世話になったのは福祉大学の学生さん。ときどき、あの子は元気かな、この子はもう結婚したかな、今はどこに住んでいるかな、と考えています。頭をさび付かせないためにも、思い出すのはいいんですよ」
年齢を超え、互いを思い支え合う姿があった。