足腰が弱り、気軽に外出できない。伴侶を亡くして暮らしに虚しさを感じる。ちょっとした日々の不便を解消できない。そもそも、コロナ禍で人に会いにくい──。高齢になるほど、日常のあちこちに小さな不安の種が増える。周囲の人々との支え合いで解消している人たちに話を聞いた。(取材・文=古川美穂)
一日家でぼーっとしているのも嫌なので
5月のある日曜日。神奈川県相模原市麻溝地区の下原公会堂では朝9時から弁当作りが始まっていた。誰でも自由に購入できるワンコインランチで、18歳以下は無料。今日のメニューはふりかけご飯に鶏から揚げと卵焼き、サラダだ。
ボランティアスタッフは10人ほど。換気のため縁側サッシと反対側の大窓を開け放った館内に、マスク、手洗い、検温と、万全のコロナ対策をとり、平均年齢やや高めのスタッフが明るく元気に立ち働いている。
主催する「あさみぞみんなのコミュニティ」は、食を通じて地域のコミュニケーションを深め、互いに支え合うことを目的に設立された市民団体だ。現在、月1度のお弁当配布と、月2回程度のコミュニティカフェを実施している。スタッフの一人、鈴木恵美子さん(81歳)はここでの活動を中心に毎月の予定を組み立てているという。
「夫が亡くなって4年。近くに住む娘の子育ての手伝いも一段落し、一日家でぼーっとしているのも嫌なので、近くの介護施設で傾聴ボランティアをしていたんです。それがコロナで中止になり、ボランティア仲間からここの活動を聞いて参加し始めました。
昔スーパーで揚げ物をしたりお弁当を作っていたこともあるので本当に楽しくて、今では生き甲斐。いろいろな方と会えるのも面白いし、お弁当の残りや、畑をやっているスタッフが作った野菜をお土産にいただけるのも助かっています」