受付で行っている「お菓子のつかみどり」は利用者に大人気なのだそう

事情のある人もない人もお互い助けて助けられて

ここで印象に残ったことについて尋ねると、最近やって来るようになったある年配男性のことを話してくれた。

「目の前で突然奥さんの具合が悪くなり、そのまま亡くなられてしまったんですって。ご本人もショックで歩けなくなり、家に引きこもってしまわれたそうです」

近所の人が心配して「あさみぞ」を紹介。最初は口が重かったが、3回ぐらい通って来るうちにだんだんと変化が見えてきたという。

「最近けっこうお話ししてくださるようになったのが嬉しくて。ご本人も、以前は寂しさを紛らわすために毎日昼の3時からお酒を飲んでいたが、今は6時ぐらいからになったとおっしゃっていました」

するとちょうど件の男性が現れた。弁当を受け取り、スタッフの男性とエンゼルスの大谷翔平選手について楽しそうに談笑している。

「あさみぞみんなのコミュニティ」の代表、博さんはこう語る。

「うちはシングルになったシニアの方も多いので、そうした経験からいろいろなお話をさせていただくこともあります。伴侶に先立たれ、障害をもつ家族と一緒に参加している方もいます。障害や、事情のある人もない人もお互い助けて助けられて、みんなが主役というのが我々のモットーなんです」

元気なひとり暮らしのシニアが、不安を抱える独居のシニアを手助けする。そのことによって、お互いに元気を与え合う豊かな循環が生まれている。

 


ルポ・コミュニティでの役割が、独居に希望をもたらす
【1】お弁当配布にコミュニティカフェ…一人暮らしの高齢者で助け助けられる関係を
【2】高齢者の生活支援をするのは、高校生や大学生のスタッフ。ギブ&テイクの関係で
【3】190戸中70戸が60歳以上の一人住まい。団地コミュニティカフェが行う関係作り