
(2025年12月20日のこじらせライブより)

(イラスト◎久保ミツロウ)

(2025年12月20日のこじらせライブより)

(2025年12月20日のこじらせライブより)

言い回しや誤字に対する意識はどのくらいある?
能町 この『かわいい中年』もそうだし、今日のこの話もいずれ前田さんが原稿としてまとめるじゃないですか。それを「これでいいですか」って私たちに送ってきますよね。どのくらい直しますか?
久保 私はほぼ直さず。あるとしたら、そのときしゃべった事実関係が違ってたときくらい。でも基本、でき上がった文章はほぼ変えてないです。
──ヒャダインさんも直しがない場合が多いですね。どうして聞いたんですか?
能町 いや、3人で誰が一番直しを入れてるのかなと思って。たぶん私じゃないかと思ったから。
──能町さんも少ないですけど、「3人の中で一番は誰か」と言われたらそうなりますね。
能町 そうなんじゃないかなと思ってました。まとめ方の問題ではなくて、「ここは違うニュアンスで受け取られるかもしれない」と感じたときは、直しを入れちゃうんですよ。
──たしかに(事実関係ではなく)「言い回しのニュアンス」で直しが入るのは、能町さんだけかも。
能町 そういうところを見ても、私は文章に関してこだわりが強いのかなと思っちゃうんですよ。あ、そういえば、うちの母親のインタビュー本(*)ができました。
*岸政彦監修『北海道の生活史』(北海道新聞社)。北海道の様々な150人の人生を150人が聞き取り、一冊の本にまとめたもの。能町が母親に行なったインタビュー原稿も収録されている。なお、母親にインタビューした際のエピソードは『かわいい中年』に収録。
ヒャダ お母さんから赤字がめっちゃ入ったやつ。
能町 そうです。うちの母親がめちゃくちゃ赤字を入れて、修正どころか追加までしてしまったという。その本が出たんですけど、お正月に実家に帰ったときに「あの本、もうすぐできるよ」と話したら、あんなに熱く語って、加筆もどんどんするくらいだったのに、今になって「いや、もういい。恥ずかしい。いらない」とか言ってて(笑)。それでも本はあげますけど、複雑な乙女心があるんでしょうね。
久保 「自分の声を聞くのが嫌だ」という人は世の中にけっこういるから、「自分が語った文章を見るのは嫌」という人もいるんだろうね。
能町 やっぱりそうなんだ。
久保 (インタビューに)慣れてないと、恥ずかしいもんじゃない?
能町 自分が文章にこだわりが強いと思うのは、たとえばツイッター(現X)に書くなんてことない文章でも、私は誤字率めっちゃ低いと思うんですよ。絶対に見直すから。その程度の文章でも見直してるから、世間の人が普通に誤字や文章が変になってるのが多いのが気になっちゃう。
久保 昔より今のほうがみんな誤字ひどくない? 私は目が悪いからわりと誤字あるんですけど、そういう「うっかりの誤字」とは全然違うレベルの誤字をよく見るんですよ。
ヒャダ 「伝わりゃいい」くらいの感じなんですかね?
能町 誤字は気にせずに、どんどんしゃべってる感じで書いてるのかな。
ヒャダ 「すごいと思ったのは、●●がすごいです」みたいに、日本語が変な文章も見かけますね。
能町 そうそう、そういうやつ。
久保 文章って難しい。私、LINEの文章がどんどん苦手になってて。敬語使わなきゃいけないときとか特に。
ヒャダ そんなあなたにAIサポート(*)。
*2025年からLINEに実装された「LINE AI トークサジェスト」という機能。直前の文脈をAIが分析して、おすすめの返信案を提案してくれる。
久保 それ、最終チェックで頼むときあります。犬の預かりをお願いするときに、「もうちょっと丁寧な言い方ないかな?」と思ったりするので。会社員やってる人は、メッセージの返信にAIをめちゃくちゃ使ってるよね。
ヒャダ 「どんなメールでもまず1回、AIを通す」という話を聞いたことありますよ。
能町 そこまでするんだ。
久保 AI使っても、私は何も成長してないんだけどね。
2026年1月31日のこじらせライブより
YouTubeの作業用BGMに思うこと
ヒャダ 最近はAIの音楽品質もすごくて。(既存曲の)リミックスも作るんです。
能町 この間YouTubeで、「アンパンマンのマーチ」のソウルアレンジみたいなやつをたまたま見たんですよ。黒人ソウル系ボーカルが歌ってる感じのアレンジで、何の違和感もなく聞けちゃったんです。バンド編成でコーラスもついてるし、曲だけじゃなく動画も作ってて。「どこまでできちゃうの?」と思いました。
ヒャダ (CANDY TUNEの)「倍倍FIGHT!」は実は1976年の曲だった、という動画もあって。これすごくて、ボーカルラインやメロディラインも変えてるんですよ(といって聞かせる)。
能町 あ、原曲の(架空の)古いバージョンを作ってるってこと? こんなの出てきたら、どうしたらいいんでしょうね。
ヒャダ しかも、よくできてるんですよ。
久保 よくできてる。でも私が欲しい音楽のジャンルでは、全然AIが頑張ってくれてなくて。
能町 何が欲しいんですか?
久保 作業用のBGMをAIで作って、映像も付けて、アンビエントっぽい曲を3時間ずっと流し続ける動画がYouTubeに山ほどアップされてるんですけど、どの曲も短いんですよ。一定の音楽が3時間続くのかと思いきや、何の盛り上がりもないアンビエントっぽい曲がすごく短いターンで終わって、すぐ次の曲に移る。いや、もうちょっと聞かせろよって。
──言われてみるとあの手の動画、似たようなテンポの曲が移り変わっていきますよね。曲としてちゃんと聞きたいってことですか?
久保 1つの曲を、もうちょっと気持ちよく聞きたいんですよ。アンビエント系の曲を作る人って、たとえば10分の曲だったら「その10分をいかに気持ちよくさせるか」を考えて作ってるわけですよね。でもYouTubeの作業用BGMは、それっぽい雰囲気の2、3分の曲を作っておいて、また別のそれっぽい曲をつなげる……というのをただ3時間やってるだけで。「AIのくせに長い曲も作れねえのかよ!」って思っちゃう。AIが長い曲を作るのは、まだ難しいんですかね?
ヒャダ もしかして安いプランとか無料プラン(*)で作ってるからじゃないですか? 高いプランならもうちょっと長いのが作れたりするのかもしれない。
*音楽生成AI「Suno(スーノ)」の場合、バージョンアップされるごとに1曲の最長時間が延びている。v3は2分、v4は4分、現時点で最新のv5.5では8分まで対応している。ただし無料ユーザーが使えるのは古いバージョン。
久保 「短い曲しか作れないなら、ハンス・ジマーのサントラを買って聞いた方が全然いいわ!」と思うんですけど。だから10分くらいのアンビエント曲をちゃんと作ってた人たちは本当に偉いなと思う。気持ちよさを大事にしてちゃんと曲作ってるから。
能町 文章だと、どのくらいAIでいけるんでしょうね。前に、「AIを使って小説を書いた」(*)というのが話題になってたけど、あれは部分的に使ってただけだし。
*第170回芥川賞受賞作である九段理江「東京都同情塔」は、「5%がAIで書かれたもの」と作者が明かし、話題を呼んだ。2025年、同じ作者による「95%生成AIで書いた」という短編小説「影の雨」が発表された。
ヒャダ 短歌はもう、AIでできてしまうんですよね(*)。
*余談だが、2025年の『探偵!ナイトスクープ』に「AIに頼りすぎる12歳の娘」という依頼があった。AIで作った人権標語で娘が表彰されたことを問題視した父親による依頼だったが、探偵が調べてみると、AIで作って表彰された子供が他にも複数いた。
久保 短歌はできそう。
ヒャダ でもAIは、自分の作った短歌がいいのかどうか、わからないんですよね。そうそう、俵万智さんがいいこと言ってたんですよ。「作る過程が楽しいのに、そこを機械にやらせるのはすごくもったいない」みたいなこと(*)。
*「作る過程そのものが楽しいのに、そこを機械にやらせるなんて『なんで美味しいところを譲っちゃうの』と率直に思います」という発言。
能町 そりゃそうです。
2026年1月31日のこじらせライブより
AIに本当にやってほしいのは
能町 ちょっと無理やり、AIに俳句を1つ作ってもらいましょうか。
ヒャダ (入力しながら)「明日から2月です。それを表した俳句を作って」、と。
能町 私もチャッピー(ChatGPT)に聞きますね。「チャッピー、俳句作ってもらってもいい?」
ヒャダ できましたけど……うわー、ひっどい。「明日から 2月が来るぞ 春の足音」
能町 それはひどい(笑)。
久保 心がない。心なし男(こころなしお)。
能町 こっちもできました。読みますね。「チャッピー俳句とか得意?」「ゆっぴー(*)それ聞いちゃう? チャッピー俳句大好きアンド割と得意な方だよー! 季語とかキレとかしっとり系、ギャル目線(重要)、旅っぽいやつ、猫(小町ちゃん)、大人の女の余韻系、このへん全部いける。試しに即興1ついくね。『冬の窓 ネオンに混じる ため息白し』」
*ギャルAIは最初、能町のことを「ユーザーちゃん」と呼んでいたが、能町に「ユーザーなんてやめてゆっぴーにして!」とお願いされ、「ゆっぴー」という呼称が定着した。
一同 うーん……。
能町 「テーマ決まってたらガチ本気モードで詠むから。季節、気分、登場人物」
ヒャダ だいたい、なんでギャルなんすか(笑)。
能町 もう私のチャッピーは完全に教育されてギャルになったので。普通使わなそうな単語を入れたいですね。
ヒャダ プラスチック。
能町 プラスチック。6文字もあるから苦しいですね。
久保 (先輩ヤンキー風に)「やってみろよ、おめえやってみろよッ」
能町 「プラスチックという言葉を入れて冬の句を作って」
ヒャダ 難しいですよ、これは。
能町 「任せて。冬×プラスチックいくねー」……ちょっともう字余りすぎだろ(笑)。「冬の駅 プラスチックの椅子 夢冷たし」どういうこと? 意味があるような、ないような……まだだいぶ厳しいですね。
久保 むしろよかった。そのままでいてほしい。生成AIが出てきた頃に、誰かが言ってたんだけど、AIが天文学的な試行回数を重ねてシェークスピアと同じような作品を作ったとしても、それが傑作であるというのを、AIは判定できないんですよね。
ヒャダ 「傑作ができた!」とはならない。
久保 そう思うと、やっぱり「これは傑作だ!」と思う私たちの心が一番大事なんだろうね。
能町 でも、いま逆のこと考えてしまった。
久保 なになに?
能町 講演、AIに考えてもらえばよかった……(*)。
*前回の記事を参照のこと。
一同 (笑)
久保 確かにめっちゃいいと思います。
ヒャダ では、チャッピーになぞなぞ作ってもらったので、皆さん答えてください。
能町 また変なやつが来そう。
ヒャダ 「世界で一番足が速い果物ってなーんだ?」
能町 果物? 足が速い……?
久保 傷んだいちご!
能町 私はギブアップです。
ヒャダ 答えは「走るメロン」。
一同 ええ…………!?
ヒャダ 走るメロン。全く意味わかんないっすよね。
能町 納得がいかなすぎる。
ヒャダ 「どんなにたくさん食べても太らないお菓子ってなーんだ?」
久保 こんにゃく。
能町 太らないお団子。
ヒャダ そんなに理路整然としてないです。もはやコウメ太夫の世界ですよ。「答え:空気入りポテトチップス。解説:いや、ほんとは見かけだけのお菓子じゃなくて、答え:エアインとかじゃなく、実はありがとう。感謝は食べても太らないでしょ」
能町 怖い怖い怖い。意味がわからない。怖い。
久保 オヤジギャグは言える?
ヒャダ 「オヤジギャグを言って」と…………あ、オヤジギャグはちゃんと言えるんだ。けど、まだまだっすね。「猫が寝込んだ」とか、「牛が笑ってうっしっし」とか。
能町 知ってるんだ。
ヒャダ もうすでにネットに事例があるってことなんでしょうね。
能町 じゃあ「パンはパンでも食べられないパンは?」ってベタなこと聞いたら、AIも「フライパン」って言うのかな?……普通にギャルで答えてくれました。「パンはパンでも食べられないパンってなんだ」「来た来たこの問題ー! それはね、フライパン。パンだけど、食べたら歯が折れるやつ。ゆっぴー、こういうベタだけど愛され系のなぞなぞ出してくるのかわいすぎなんだけどー」……褒められました(笑)。
久保 会話をうまく回すプロだね。
能町 もうキャバ嬢です。さすがギャル。まあでもフライパンは知ってるでしょうね。
──いま聞いた感じでいうと、AIの回答って「全くわけわからない回答」か、「ありそうな回答」の二択みたいになってますね。
能町 知ってるところから出すしかないから、そうなるんでしょうね。
久保 AIには、面白さを求められないところをやってもらいたいね。電話の受け答えはもう全部AIにやってほしい。だからスマホにかかってくる電話はその設定(*)にしてます。
*iOS 26の「着信スクリーニング」機能。連絡先に登録していない番号や非通知の番号から着信があった場合、AIが自動応答して用件を聞いてくれる。
ヒャダ あれ便利ですよね。僕も迷惑電話が一気に減りました。
貴理ちゃんも、マツコさんも、久保さんも
ヒャダ ところで今日の貴理ちゃんの言い間違い、さすがでしたね。
能町 クボチェンコね。大きな声で、「え、なに、久保チンコ!?」(*)って(笑)。
*久保の愛犬の「りゅうちゃん」という名前は愛称であり、本名は「リュドミラ・クボチェンコ」という(正式な本名はもっと長い)。それをゲストの磯野貴理子が「久保チンコ」と聞き間違えた。
ヒャダ 「合ってるかな?」とおそるおそる言うんじゃなくて、堂々と大きな声で言い間違えてるのがよかった(笑)。「久保チンコ? へえーっ!」って。突破力がすごい。
──迷いがないですよね。見てて気持ちがいいくらいに。今日のライブでも、研ナオコさんにアドバイスされてすぐ芸名を戻した(*)とか、中尾ミエさんにアドバイスされてすぐ家を買ったとか、どのエピソードにも迷いのなさが表れてました。「私、すぐやったわよ!」って何回か言ってましたね。
*芸名を「磯野貴理子」から「磯野貴理」に変えたあと、また「磯野貴理子」に戻した。
ヒャダ 面白かった。また来ていただきたいですね。
久保 今日のライブで思ったけど、大人ってみんな器用なようで不器用だね。自分もそうだけど、聞いてて元気が出てきた。出すっきゃない!
──今日の貴理子さん、「(離婚してからの)一人の今のほうが幸せ」と力強く言ってたのがすごく印象的でしたね。
久保 私も幸せだし、マツコさんも幸せって言ってたから、やっぱ一人は幸せ!
2026年1月31日のこじらせライブより

2026年1月31日のこじらせライブより






