ドードーが絶滅の象徴のように扱われる理由

――幼少期のお話はまさに「センス・オブ・ワンダー(うわーっ、びっくりしたぁ、というような感覚)」ですね。そうした感覚を喚起させる生き物を、川端さんは「へんてこ」と呼んでいますが、絶滅動物も「へんてこ」なんですね。他方で、物語の中の絶滅動物とは、どのように接してきましたか? たとえば『不思議の国のアリス』や『ドラえもん』にはドードーが登場しますね。

はい、絶滅動物も「へんてこ」です。といいますか、たぶん、絶滅した後も語り継がれているような動物には、ある意味、キャラが立ったものが多いのだと思います。

『不思議の国のアリス』では、完全に「キャラクター」として登場しますよね。著者のルイス・キャロルの本名は、ドジソンですが、それが、実はドッドソンと発音するらしくて、それで、ドードーのキャラクターに自分を重ねた、と。だから、絶滅とは別の文脈が豊富で、『アリス』に親しんでドードーを知っている人も、あとになって「あれは実在の鳥で、絶滅していたんだ!」と気づく場合も多いみたいです。ぼくも、そうでした。

『不思議の国のアリス』で《ドードー》をキャラクターとして親しんだ人は後から「あれは実在の鳥で、絶滅していたんだ!」と気づく場合も多いと語る川端さん

たぶん、『アリス』に登場しなければ、ドードーは今ほど有名になっていなかったと思います。絶滅の象徴のように扱われるようになったのも、『アリス』に登場したからこそ、くらいのインパクトがあったのではないでしょうか。ディズニーのアニメ版でも、かなり活躍していますしね。

ぼくよりもちょっと下の世代になると、『ドラえもん』で、ドードーや、ニュージランドの飛べない巨鳥モアを知ったという人が多くいように思います。「モアやドードーよ、永遠に」という回ですけど、コミックスの1979年に初版なので、ぼくはもう中学3年生なんですよね。リアルタイムで読んでいる世代ではなくて、ずっと後になってから、アニメで見たと思います。それで気づいたんですが、のび太は『ほろびゆく動物たち』という本を読んでいるんです。きっと、ぼくが読んだのと同じやつかもしれません。(笑)

『ドラえもん』の後も、ゲームや小説にも、繰り返し登場しますし、みんな、自分の「心のドードー」は、それぞれ別、なんですよね。でも、日本でここまで知られるようになったのは、やはり『ドラえもん』の影響が大きいと思います。『アリス』とは違って、ちゃんと絶滅の経緯とか、情報も伝えてくれているので、『ドラえもん』で知った人は、「キャラクターだと思っていた」というはことまずありません。