生き物について論文を検索し発見がある事は楽しい

――『ドードー鳥と孤独鳥』は小説なのに、巻末の謝辞に並んだ識者や参考文献の数々が圧巻でした。川端さんは科学論文を読んだり、研究者にインタビューしたり、しっかりとしたインプットを積み重ねていますね。

自分はウォッチャー体質ではないみたいで、関心がある分野でも、ふだんからアンテナを張り巡らして、というようなことはあまりやっていません。もちろん、ソーシャルメディアでは関心が近い人とつながっているし、自然と目に入るものはフォローしているわけですけど、本格的に調べるのはこのテーマで書こうと決めた時ですね。だから、「インプットの労力」みたいな意識はあまりないです。「これについて書くことに決めたから、さあ、調べようか」みたいな意識ですね。

ただ、調べる前の下地みたいなのはちゃんとしていたほうがいいと思っていて、関心がある分野で、新しいテキストブックみたいなものが出たらできるだけ目を通そうとしています。たとえば、感染症疫学の本って、新型コロナ以降、日本語でも増えましたけれど、新しいものが出たら本は読んでおこうとは思います。知識をリフレッシュできるし、別の視点で書かれていたりすると、理解が深まったり視野が広くなりますし。そうすると、いざ、なにか書こうというときに、何を調べたらいいのか、最初からそれほど迷わずに済むかなと思うんです。

ところでなんですが、最近は、書いた内容についての裏付けについての要求水準が随分上がってきたように思います。今は、研究者じゃなくても論文の検索はできますし、多少専門的なことを書くなら、論拠となっている研究論文はこれなんだというのは探っておかないと、と思います。逆に、『へんてこな生き物』でもやりましたが、この生き物について最近どんな研究があるんだろうと、Google Scholarで検索して、「こんなおもしろいことがあった!」と見つけると楽しいので、喜んでやりますね。

――ありがとうございました。川端さんの「へんてこ巡礼」の今後を楽しみにしています。


へんてこな生き物-世界のふしぎを巡る旅 』(著:川端裕人/中央公論新社)

可愛い小動物ハニーポッサムは、巨大な睾丸の持ち主。水棲哺乳類アマゾンマナティが森の中を「飛ぶ」って? ペンギンなのに、森の中で巣作りをする「妖精」。まるでネズミ! 手のひらサイズの巨大な虫。
かわいかったり、美しかったり、ひねくれていたり、奇妙だったり、数奇な運命に弄ばれたり、とにかく常識を軽く超えてくる生き物たちの「へんてこ」ぶりを活写。
三〇年以上にわたり研究者やナチュラリストと共に活動してきた著者が、新しい科学的なトピックをまじえて約五〇種の生態を楽しく紹介する。二〇〇枚超のオリジナル写真を掲載。生き物とヒトとのかかわりの歴史を垣間見る意味で、古い博物画も収載した。
かくも多様な生き物たちが存在することに、「あっ」とセンス・オブ・ワンダーを感じずにいられない一冊。