『へんてこな生き物』(中公新書ラクレ)の著者、川端裕人氏
近年、児童書やコミックで「絶滅動物」をテーマにした作品が人気を博しています。古くは『不思議の国のアリス』や『ドラえもん』に登場するドードー(マダガスカル沖のモーリシャス島に生息していた鳥)のように、絶滅動物は物語の中でも私たちを惹きつけてやみません。昨年、『へんてこな生き物』(中公新書ラクレ)を著した川端氏は『ドードーをめぐる堂々めぐり』(岩波書店)といったノンフィクション作品や、『ドードー鳥と孤独鳥』(国書刊行会)といった小説作品がある二刀流の作家であり、「絶滅動物を偏愛している」と公言しています。絶滅動物の魅力と、川端作品の魅力についてお尋ねしました。

「近代の絶滅」は恐竜などの絶滅とは違う

――川端さんの作品群には、生き物が絶滅することへの痛み、そして痛みを感じるのは生き物への愛あればこそ、というメッセージを感じます。その原点はどこにあるのですか?

生き物への関心は、「物心がついたころ」からです。都心と比較して、雑木林や原っぱや小川が身の回りにある環境だったので、雑木林ではカブトムシやクワガタを、原っぱではバッタを、小川では水棲昆虫やザリガニやエビやカメを追いかけていました。それに先立って海辺に住んでいたこともあり、潮溜まりで磯の生き物を探すのも大好きだったようです。いろんな生き物があちこちにいて、例えば、石ころひとつひっくり返すと、そこにもいろんなものがいる、というのが驚きでした。すごいなーと、目をキラキラさせていたと思います。

「絶滅」、それも、「近代の絶滅」に関心を持つようになったのは、高校生の頃です。ちょうど、SF作家ロバート・シルバーバーグのノンフィクション『地上から消えた動物たち』を読んで、ドードーやリョコウバトやステラーカイギュウについて知り、アルバイトでためたお金で、ちょっと高かったけど小学館から出ていた『大図説 滅びゆく動物』という図鑑を買ったりしました。「近代の絶滅」が恐竜などの絶滅と違うのは、「会えたかもしれないのに会えなかった」ということなんです。こんな生き物がいたのなら見てみたかった。でも、もういない。おまけに、どうやら、滅ぼしたのは人間らしい。もう、なんともいえない、複雑を気持ちになりますよね。こういうことを高校生の頃に、感じていました。以来、折を見ては、各地の自然史博物館や、元々の生息地を訪ねるようになりました。

ドードー (Dodo, Extinct Birds, Walter Rothschild, 1907, William Frohawk del.)