続編を出すなら「推しのへんてこ」は「カモノハシ」

――川端さんは、絶滅危惧種も含めて数々の「へんてこ」を活写してきました。「続編を出すならこれは推したい」という「へんてこ」をぜひプレゼンしてください。

やはり、卵を産んで母乳で育てる不思議な哺乳類(単孔類)、カモノハシですかね。オーストラリアのタスマニアに行けたらぜひ見てこようと思っているんですけど、本当に不思議な生き物です。和名の通り、大きなクチバシを持っていて、標本をはじめて見たイギリスの博物学者は、ビーバーのような動物にくちばしを縫い付けて作られたものではないかと思ったほどでした。でも、実在する動物で、クチバシには電気刺激を感じ取るセンサーがたくさんあったり、同じ哺乳類の仲間なのに、ちょっと違う世界に生きているみたいなんですよね。哺乳類が持っていた様々な可能性を見せてくれる不思議な生き物だと思っています。ね、「へんてこ」でしょう?

『へんてこな生き物-世界のふしぎを巡る旅』(著:川端裕人/中央公論新社)

――30年以上にわたり世界各地のフィールドを巡っていますね。特に愛着のある場所や、これから行ってみたい土地を教えてください。

もっと地元のこと、日本のことを知りたいなと思うようなフェーズにだんだんなってきたと思っているんですが、今、具体的に行ってみたいと思っている海外のフィールドは、やはり先に言いましたオーストラリアのタスマニアですね。カモノハシだけでなくて、フクロオオカミという、1936年に最後の飼育下個体が死亡して、今は絶滅したと考えられている有袋類の肉食動物の痕跡をたどりたいんです。フクロオオカミはその名の通り、オオカミに似ているんですが、実は、むしろ、カンガルーやワラビーに近い有袋類です。全然、違う場所で別々に進化したのに似ているので、進化生物学でいう「進化収斂」の実例だと言われています。

愛着があるのは、ニュージーランドですね。『へんてこな生き物』でも、ともに絶滅危惧種のカカポとかタカヘとか、ニュージーランドの生き物を多く紹介しました。90年代には足繁く通っていましたし、2000年代になってからは、子どもたちと一緒に住んださいきこともあって、思い入れが深いです。

「カカポ」1999年、川端氏はニュージーランドの南島を訪れ、カカポの人工孵化と人工育雛を取材した(撮影・川端裕人)
「タカヘ」ニュージーランドの鳥・タカヘは二度の絶滅からよみがえった(撮影・川端裕人)

――絶滅種も含めた博物画が、作品中に掲載されているのも魅力です。いつ頃から、どのように収集してきたのですか?

収集というほどのことはなくて、ネットで古い博物画をおさめた論文や図譜が簡単に読めるようになってきたので、それを意識的に見るようにしているんです。「どこになにがあるか」を常にアップデートするようにしている、というかんじですね。関心がある生き物がいたら、それがどんなふうに見出されて、語られてきたのか知りたくなるじゃないですか。それをたどるのが、今はとても簡単になったので、できるだけやるようにしています。

絶滅危惧種のカカポ。博物画(左)は『ドードー鳥と孤独鳥』、右は『へんてこな生き物』より