中国の選挙介入を防ぐ

「台湾の人たちの意見を対立させて、衝突させることができれば、中国にとって有利になる。虚偽の情報も意図的に流すと思う。台湾の民意を守る選挙にしなければならない」=小原氏

「割れた野党が政権交代の選択肢を示せるのか。中国との向き合い方について、どのような意見が交わされて、どのような決断をするのか。日本からも注視する必要がある」=福田氏

伊藤中国が、虚偽の情報を広める情報戦を仕掛けて、台湾の世論を惑わしたりする可能性は十分にあると思います。中国は、インターネットを通してかく乱するだけではなく、うわさを人づてに広めると言われます。台湾の人たちの思いが、選挙に正確に反映されることが大切です。国際社会は選挙の行方をしっかり見守るべきです。

SNSを通して有権者を特定の候補や特定の意見に誘導したのではないかと疑われる事例は、すでに欧米でも起きています。小原さんは番組で、台湾では官民が連携して虚偽の情報を検知したりする取り組みが進んでいると紹介されました。台湾はコロナ禍の対応で情報技術(IT)を活用するなど、サイバー分野に強みを持っています。民主主義とは、自由で公正な選挙を行い、発足した政権の統治を受け入れるということです。民主主義を新たな脅威から守るということは、日本にとっても他人事ではありません。

吉田中国は民進党が優勢であることに危機感を持っており、「戦争か平和かという二つの選択に台湾は直面している」と、どう喝しています。ただ、若い世代を中心に、自らを「台湾人」と認識する台湾の人たちは増えています。台湾への圧力を強めれば、中国への反発は高まるでしょう。中国が露骨に国民党に近づけば、国民党の支持率は落ちてしまうでしょう。中国による工作は、あからさまにできない分、水面下で巧妙になる可能性があります。

米国と中国が対立を深めるなか、総統選の結果は、地域の安全保障と民主主義の行方に関わります。有事を防ぐ冷静な議論が求められています。そのためにも、台湾と中国の関係、台湾の民主化の歴史、そして台湾と日本の関係について、改めて理解を深めることは大切なことだと思います。

解説者のプロフィール

伊藤俊行/いとう・としゆき
読売新聞編集委員

1964年生まれ。東京都出身。早稲田大学第一文学部卒業。1988 年読売新聞社入社。ワシントン特派員、国際部長、政治部長などを経て現職。

 

吉田清久/よしだ・きよひさ
読売新聞編集委員

1961年生まれ。石川県出身。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。1987年読売新聞社入社。東北総局、政治部次長、 医療部長などを経て現職。

 

提供:読売新聞