概要

旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫る報道番組「深層NEWS」。読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める伊藤俊行編集委員と、元キャスターの吉田清久編集委員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。

台湾のトップを決める総統選が来年1月に迫っている。有力候補4人が名乗りを上げる混戦模様で、圧力を強める中国との向き合い方が最大の争点になる。台湾の人々はどのような選択をするのか。笹川平和財団上席フェローの小原凡司氏と法政大教授の福田円(まどか)氏を迎えた9月7日の放送を踏まえて、編集委員2氏が語り合った。

台湾総統選混戦の行方

現状をどう維持するか

「台湾の世論の大勢は、一言で言うなら、現状の維持だ。どのように中国と向き合えば、現状を維持できるのかということが問われており、それが選挙の争点になっている」=福田氏

「米国が求めているのは、台湾が独立を宣言しないことだ。中国も黙っていられなくなる。蔡英文総統にも要求していたことであり、その姿勢を続けてほしいと考えている」=小原氏

伊藤今回の総統選は国際的な関心を集めています。台湾は、安全保障、先端技術、民主主義を守る観点から、重要な地域だからです。中国の習近平国家主席は台湾を中国に統一する意欲を隠そうとしません。有事となれば、米国と日本の安全保障に直結します。台湾は半導体製造を得意としており、経済安全保障上も欠かせません。

台湾と中国の関係は複雑でセンシティブです。福田さんが指摘されたように、台湾の中国への向き合い方は反中国か親中国かの二者択一ではありません。中国の侵攻は防がなければなりませんが、だからといって、台湾の独立を目指すわけではありません。誰がうまく現状を維持できるのかということが問われる選挙になりそうです。

吉田台湾の世論調査によると、4人の候補のうち、与党・民進党の頼清徳氏が先行しています。中国との向き合い方を見ると、頼氏は中国とは距離を置いています。対する国民党の侯友宜氏は中国に融和的です。第三勢力である台湾民衆党の柯文哲氏、無所属で鴻海(ホンハイ)精密工業創業者の郭台銘氏は中国と対話する姿勢を示しています。

与党・頼清徳氏がリードも”混戦”に©️日本テレビ

中国との緊張と対話のバランスをどう考えるのか。中国との経済関係をどう考えるのか。台湾有事が懸念されるなか、現地台湾で、どのような意見が交わされているのかを知ることができる機会になります。選挙結果は東アジアの地域情勢に影響しますし、中国が出方を変えてくる可能性もあります。