「おい、稔。明日の朝十時に車の用意だ」
「わかりました。行き先は?」
「目黒区の西量寺って寺だ」
「寺ですか……」
稔は怪訝(けげん)そうな顔をしたが、健一や真吉は目を輝かせた。
健一が言った。
「今度は寺ですか?」
傾いている寺を立て直すという話だと思っているようだ。
日村は言った。
「今回は、おまえらが思っているような話じゃなさそうだぞ」
健一が聞き返す。
「そうなんですか? でも、代貸、現地にいらっしゃったんですよね?」
「行った。最初は神社で神主から話を聞いた」
「多嘉原会長がいらした件ですね?」
「そうだ」
すると、真吉が言った。
「あ、やっぱりテキヤの手伝いか何かをするんですね?」
「そうじゃない」
日村は言った。「祭からテキヤが追い出される件について事情を聞いたんだ」
真吉が表情を曇らせる。
「祭からテキヤを追い出す? それってどういうことです?」
すると、普段滅多にしゃべらないテツが言った。
「暴対法に排除条例だよ。警察は、神農系も暴力団と見なしているから……」