孫祭り食はやっぱりコレ

日本に帰ってすぐNHKの『飛ぶ教室』の生放送だったが(考えてみれば、源一郎さんと『飛ぶ教室』のスタッフが今や定期的に会う数少ない人たちだ)、補聴器なしでも問題がなかった。放送中はイヤフォンを使うから、聞き逃すことはないのである。それに、源一郎さんの声は大きい。彼も耳の聞こえが悪くなっているのかもしれない。

源一郎さん以外の人と話すとき。対面で向かい合ってきちんとしゃべるときには、補聴器はなくてもいい。東京では親友枝元の家に泊まるから、リラックスして補聴器は外して枝元としゃべる。何の問題もない。枝元も声が大きい。でも友人の中には喉の病気で大きい声が出せなくなった人がいる。高齢で発声が不明瞭になった人もいる。補聴器がなくなって、それに気づいた。

熊本の朝、だらけた格好と気持ちでゴミ出しに出ていって近所の人としゃべったら、何も聞こえなかった。相手の顔を見て、さもわかってるふうに、そうねそうねとうなずいているあたしはなんと不誠実だったことか。

いや、ぐたぐた考えるまでもない。ベルリンから飛行機で飛び立ったとき、すでに、買わなくちゃとあきらめていたんだと思う。

しかしながら補聴器のお店で悩み抜いたのが、失くしたのと同じ最上位機種Aを買うか否か。1ランク下のBなら6、70万だが(と簡単に言いますけどね……)、入ってくる雑音を押さえる機能がAに比べて劣る。Aなら3年間の保証があり、失くしたらパアだが、故障したら保証される。その保証がBは2年間だ。

うーむ。

ところがそこに天の配剤、新しくできたリースのプログラムがあった。

AでもBでも、3年間、失くしても落としても保証がつく。Bならば、最初に20数万払っておけば、後は月々1万円。均せば年々20万。月1回、ぜーたくに食べて服を買ったと思えばいい。そしてくり返すが、失くしても落としてもいい。

あたしはあと20年で88になる。夫は87歳で死んだ。父は89歳で死んだ。母は84歳で死んだ。たぶんあたしもそんなものなんじゃないだろうか。メガネも、携帯も、コンピュータも、運転をやめるまでは車も、なくちゃ困るものなのだろう、そして補聴器も。等々ぐらぐら揺れながら、結局、月々1万、年々20万のBのリースにした。

まず3年間はこれでがんばる。いくらでも、思いっきり、失くせる。妖怪物隠しめ、秘剣リースの妖怪返しの技を喰らえーーーてなもんだい。

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