最後に、離婚問題に詳しい弁護士の秋田一惠さんに、卒婚にあたっての注意点を聞いた。

「カオルさんや万里子さんのような卒婚スタイルをとるケースは珍しくありません。しかし忘れてはならないのは、あくまでもこれは別居であって、法的には婚姻関係にあるということ。たとえ卒婚状態にあっても、互いに何かあれば扶養する義務があるのです。たとえば医療の現場では家族であることが非常に重視されます。延命治療や手術の同意などは家族でないとできませんし、その後、要介護状態になったときは夫婦である限り介護しなければなりません」

また、別居している間に夫から離婚を切り出されたらどうなるだろう。

「いくら妻が離婚したくないと言っても、別居状態が長く続いていれば、婚姻関係は破綻していると裁判所に判断され、すんなり離婚が認められることが多いです。また、卒婚後に築いた財産は共有財産ではないと考えられる可能性もあります。夫の定年退職後に離婚を決めた卒婚夫婦のケースでは、別居期間中は婚姻関係が破綻していたという理由で、退職金の妻への財産分与額が減らされる場合もあります」

卒婚によって、想定外のトラブルに遭わないためにはどうしたらよいだろうか。

「弁護士に相談して、夫婦間の取り決めを書面化するよう依頼したほうが安心です。別居中の医療や介護をどうするか、財産やお墓のことなどを事前に決めておくのです。もしもあなたが卒婚を考えているならば、まずはこれから生きていくのにどれくらいのお金が必要かを洗い出し、将来的な計画を立てることから始めてはどうでしょうか。卒婚は夫婦のこれからを見直すきっかけになるかもしれません」