現在、万里子さんは年金と、母が遺した少々の現金、そして自身が貯めた500万円を生活費に充てている。

「実家だから家賃はかかりませんし、贅沢をしなければ十分暮らしていけます。子どもたちの教育費を払い終えて以降、夫からの給料は、いざという時のためにコツコツ貯めてきました。物理的にも精神的にも、それが卒婚に踏み出す原動力になったことは間違いありません」

また、庭で家庭菜園を始めたことで食費も節約できていると言う。「気持ちに余裕があるせいか、夫にも優しくできるようになった」と笑う万里子さん。この調子なら「卒婚を卒業」する日も近いのでは?

「それはありません。離れているからこそ良い関係でいられるので。お互い一人暮らしが難しい状況になったら、それぞれ家を売ったお金で介護施設に入るのが最善の選択だと考えています」と冷静に将来のプランを語る。卒婚からのセカンドライフは、夫には自立を、妻には初めての自由をもたらしたようだ。

 

卒婚をするうえで注意すべきこととは?

今回2人に取材して感じたのは、一口に「卒婚」といっても解釈は人それぞれであるということ。そして精神的に自由になれたことで、卒婚後のほうがパートナーとの関係が良好になっているという点だ。これは離婚との大きな違いのように思う。

また2人が2人とも「子育てが終わったらもう夫婦でいる必要はないのでは」と考えていた点も興味深かった。その一方で、妻の側に経済力があるか否かが卒婚成功のカギになることは間違いない。いずれは卒婚をと思っているなら、今から対策をしておく必要があるだろう。