先回りして市役所に離婚不受理届を提出

その結果、カオルさんは離婚ではなく卒婚を選んだ。そこにはカオルさんなりの考えがあった。

「長年苦しめられた夫に“おしおき”することに意味があるので、離婚は避けたい。それに、離婚をするとすべての財産を夫と妻で半分に分けることになりますが、手続きに労力を使うことすらイヤ。保険をはじめとする書類の名義変更も同様です。夫名義の自宅とはいえ、半分に分けるというのも私には納得がいかない。それを踏まえた結果、別居という形での卒婚が私にとってベストだったのです」

ところで、専業主婦だというカオルさんは、どうやって卒婚後の生活費を準備したのだろう?

「亡くなった両親が不動産を遺してくれて、その家賃収入が月に15万~16万円ほどある。贅沢をしなければなんとかやっていけます」

だからこそ、ここまで強気に出られたということか。そんなカオルさんが最終的に立てたプランは、次のようなものだった。(1)離婚はしない。(2)自宅の名義は夫のまま。ただし夫には家を出てもらう。(3)夫の退職金は夫婦で折半する。(4)自宅の固定資産税、夫の保険料等の費用は、すべて妻が支払う。

「夫は浪費家。遊ぶ金欲しさに無心をされても、これなら『税金も保険も私が払っているのに』と拒否できますから。また勝手に離婚届を出されないよう、先回りして市役所に離婚不受理届も提出しておきました」

まさにパーフェクトな卒婚支度である。そしてそうこうするうちに夫が定年退職する時がやってきた。

「私は精神的限界を訴え、夫に家を出るよう要求しました。最初は拒否されるも、私の決意が固いと知ると態度は徐々に軟化。ついに『部屋を探すよ』と折れてくれたのです」

カオルさんは夫の退職金1400万円のうち、半分の700万円を受け取り、4つのプランをすべて了承させた。夫は700万円を手に引っ越して行ったそう。

「引っ越し先は彼の地元の福岡県。老後に頼られたら面倒なので『地元なら友達もいていいんじゃない?』とすすめました(笑)。今は向こうで楽しくやっているようですよ」

気分一新、一人暮らしを満喫しているカオルさん。卒婚して夫婦ともに心穏やかに暮らす。これも一つの幸せの形なのかもしれない。

 

親の介護で実家暮らしに

「親の介護が卒婚のきっかけになりました」と言うのは、長野県在住の万里子さん(66歳)。内装業を営む夫(70歳)とは、仕事を手伝っていた関係で、朝から晩まで顔を合わせながら生活してきた。

「夫は、家の中では縦のものを横にもしない人でした。仕事を終えて2人で帰宅すると、家事や子どもの世話はすべて私一人の負担に。しかも、仕事場を離れても関係性は“雇い主と従業員”。常に上からものを言われ、息が詰まる毎日を送ってきました」