そんななか、5年前に隣県に住む万里子さんの母親が骨折して寝たきりに。母親は一人暮らしだったので、介護のため一人娘の万里子さんが実家へ通うようになった。

「最初は日帰りだったものの、だんだんと帰るのが億劫になってきて。実家に1泊、2泊とするうち、自宅に戻るのは週に1回程度になってしまいました。娘たちも嫁いで家を離れていたので、ますます帰りたくなかったんです。ちょうどその頃、ワイドショーで卒婚という言葉を耳にして、いい響きだなあと。そこで私も夫に『結婚を卒業して自由に生きたい』と申し出ました」

夫は当初「ばかばかしい」と取りあわなかったが、万里子さんが「離婚じゃないから籍はそのまま。面倒な手続きもない。ご近所には、引き続き親の介護で実家に帰っていると言えばいいから」と説得すると、しぶしぶながら承諾してくれたという。

 

卒婚を機に人間的に丸くなった夫

その後、自身の身の回りのものを運び出し、実家で暮らすようになった万里子さん。母親は1年前に亡くなったが、それでも夫のもとには帰っていない。今ではせいぜい月に1回、顔を出すくらいだ。

「1人のほうが気楽というのもありますが、何より卒婚したことで夫が変わったんです。私が訪ねると黙っていてもお茶を淹れてくれるようになり、以前のようにとげとげしい物言いもしなくなりました。問題は食事でしたが、店屋物に飽きてからは、料理本を見ながら自分で作っているようです。ビックリですよ(笑)」