3月に入って検査をしてみると、大腸がんのステージIIIBであることが判明。手術をして大腸を切除したが、入院により認知症も進んでしまっていた。病室の外にあるトイレに行くと、帰り道がわからなくなる。看護師や介護福祉士から「これでは日中、自宅で1人では過ごせません。退院後は施設入所を考えたほうがいい」とアドバイスされ、施設探しに奔走した。

母親の貯金は330万円。年金は月12万円。遠方の施設ならば費用は安くてすむが、幸子さんが今の仕事を続けながら面会に通える所となると、最低でも月25万円はかかる。単純に計算しても、母親のお金でやりくりできるのは2年まで。その後どうするのか。

幸子さんは定年まであと3年、再雇用を利用しても働けるのは10年に満たない。今後の自分の状況を考えると、少しでも収入を確保しておく必要がある。費用のことを考えると頭が痛い。

さらに母親の肝臓に血栓が見つかった。ところが認知症が進んだため点滴の針を抜き、注射や投薬を拒否する。幸子さんが病室に行っても、「私を家から追い出してよかったね」と悪態をつき、次第に粗暴になった。この状態では受け入れてくれるところもなく、施設探しも白紙に。

「現状では病院で治療し、急変がないよう祈るしかないのです。終わりが見えないのが本当につらい」

住んでいるマンションは、母親が施設へ入所できるようになったら売却するつもりだという。3LDKは一人では広いので、コンパクトな暮らしにし、少しでも介護費用を捻出したいと考えている。

 


ルポ・「親子共倒れ」が頭をかすめた日

【前編】母の入院で老後資金を使い果たし、働き続けるしかない
【後編】介護のストレスから離職、遠距離介護の行く末は……(※後日公開)