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住み心地の悪さを「今さら仕方ない」と諦めていませんか? 住宅環境は健康寿命にも大きく影響するといいます。一級建築士の水越美枝子さんが提案する、人生後半を安心・安全に過ごせる家作りとは(構成=上田恵子 イラスト=ひしだようこ)

8割の人が「暖かい家にしたい」

子育て世代から夫婦2人暮らしになるなど家族形態が変われば、家に求める条件も変わってくるもの。とくに定年後は家で過ごす時間が長くなり、室内環境がより重要になります。ストレスを溜めず、心身ともに健やかに暮らせるよう、住まいを快適に整えていきたいものです。

私はシニア世代の住まいのリフォームを多く手がけています。そのなかで目立つのが、30~40年前に家を購入した方からの相談。間取りの変更などと同時に、8割の方が「暖かい家にしたい」と希望されます。それだけ寒さに悩んでいる人が多いということでしょう。

実は壁に高性能の断熱材を入れるなど、高断熱化が一般的になってきたのは、二十数年前。つまりそれ以前に建てられた家は、あまり対策が取られていないのです。

断熱化が十分ではない住まいでは、健康に直結するトラブルが起きやすいと言われています。

たとえば、夜中にトイレに起きた際にヒートショック(寒暖差による血圧の急変)を起こしやすいのも、寒暖差の大きさゆえ。真冬の布団の中と廊下との温度差は20度以上になることもあるため、高齢者の体には負担が大きいのです。

さらに、家の中が寒いと高血圧や動脈硬化が進む原因になると言われていますし、入浴時の事故のリスクも上昇。暖かい家に暮らしている人は寒い家で暮らしている人と比べて、健康寿命が4歳延びるという調査結果もあります。

夏は夏で、地球温暖化の影響により気温は上がる一方。熱中症の多くが住居内で起きている現実を考えると、断熱化をしっかりして、屋外の暑さを家の中に伝えにくくすると同時に、エアコンの効きをよくすることも重要なのです。