結婚、離婚、9度のがん…悲喜こもごもに生きてきた
あっという間だったという気がするのも事実なのだけれど、改めて過去を振り返ってみるといろいろな時期があり、「悲喜こもごもに生きてきたな」と思います。28歳で結婚、36歳で一人息子を授かり、でも42歳のときには離婚して。おかげさまで女優としては充実していましたが、そのぶん息子には寂しい思いをさせたことを猛省したり……。
いつの世も生きていくのって大変なんですよね。特に、私たちの時代の女はとかく我慢を強いられて、結婚と仕事を両立するのがまだまだ難しかった。30代か40代のころかしら。あるとき『婦人公論』を読んで、専業主婦も職業婦人も、子どもがいてもいなくても、女はみんなさまざまな悩みを抱えながら暮らしているのだなと痛感したことがありましたね。私も頑張らなくてはと奮起したものです。
もっとも私は基本的に楽天家で、苦しい局面もサバサバと乗り越えてしまうタイプ。健康面では多重がん(2個以上の臓器に独立して発生するがん)に翻弄され続けてきましたが、グジュグジュと思い悩んだことは一度もありません。
58歳のときに乳がんで左乳房を全摘出し、3年後に胃がんを、その2年後には食道がんを発症。胃がんと食道がんが再発したり、昨年は皮膚がんも見つかって手術を受けました。今も元気に生きているのは早期発見・早期治療の賜物。定期検診を受けて初期段階で見つけることができれば、がんは怖くないのです。この年齢になると、がんのほうものんびりしていますしね。(笑)
そもそもわが家はがん家系。両親も姉もがんで他界したので、おそらく私もと覚悟していたのです。ですから最初に乳がんと診断されたときも、淡々と受け止めることができました。医師から乳頭を残す温存法と、全摘手術のどちらにするかと選択を迫られ、迷わず全摘手術を選んだのは、舞台を控えていたから。全摘すれば抗がん剤治療や放射線治療のために通院する必要がないと説明を受けて決断しました。
いつも私は即決なんです。考えるのが面倒くさいのね。だから直感でパッと決めてしまう。その先に失敗が待ち受けていることもありますけれど、私の知る限り、失敗のない人生を生きる人なんていない。うまくいくかどうかなんてやってみなくちゃわからないんですよ。「下手の考え休むに似たり」という言葉もあるでしょう?
それに、失敗したと思ったら、反省を踏まえてやり直せばよいのではないでしょうか。いずれにしても、うまくいくだろうかと悩んでいる時間ほど惜しいものはないと私は思うのです。悩んでいたら、やり直す時間がなくなってしまうじゃありませんか。