老化には個人差が、かなりある

脳だけでなく、臓器や骨の老化にもかなり個人差がある。普通は、70代の患者はまだ中高年とそれほど変わらず、80代になると老人医療の範疇で捉えることが必要になるのだが、人によってはまだ60代なのに骨粗しょう症で腰がひどく曲がってしまっている人、アルツハイマー病にかかってしまう人、動脈硬化によって全身の臓器がボロボロになってしまっている人などがいて、みんな同じように一律で捉えることはできない。

これらは、骨の老化、脳の老化、血管の老化などが原因で引き起こされる病気で、いわば「老化病」といえるものである。60代であっても、ある人は骨が80代と同じくらい老化していたり、ある人は血管が80代並みに老化していたりするわけだ。

私は合計で3000件以上の患者さんの脳の写真を見てきたが、そのなかで言えるのは、80代にもなれば、脳の委縮が起こらない人はいないし、浴風会病院時代は脳の解剖の報告会にずっと出ていたが、アルツハイマー型の変化が多少なりとも起きていない人は、ほとんどいない。しかし、全員が認知症を発症しているわけではないのである。

動脈硬化やがんも同様で、年をとってくれば動脈硬化が起こっていない人など存在しないし、がん細胞が少しもない人も存在しない。ところが、全員が虚血性心疾患(動脈硬化によって起こる)になるわけでもなければ、がんの症状が出ているわけではない。

思秋期以後の病気は、老化の度合いによって発症するものがかなり多いのである。

●臓器の老化が病気の始まり
『50歳の分岐点――差がつく「思秋期」の過ごし方』(著:和田秀樹/大和書房)