『バービー』

マーゴット・ロビーとライアン・ゴズリング主演、グレタ・ガーウィグ監督のロマンティック・コメディです。

今年の8月のアメリカ公開時、原爆開発者であるロバート・オッペンハイマーを描いたクリストファー・ノーラン監督作『オッペンハイマー』と掛け合わせたコラージュ画像(ファンが2作品が同日公開ということに因んで作成したようですが、あまりセンスのないものです)がSNS上で炎上したハプニングが起きました。

この騒ぎで無用な色眼鏡で作品は過小評価された向きがあります。映画自体が強く訴えていたテーマが性差の解消、価値観の多様性の肯定だったのですから残念な結果でした。

監督のガーウィグは〈マンブルコア映画運動〉の俳優として頭角を現した人。マンブルコアとは2000年代以降、盛んに製作されたインディーズ系映画でアメリカの中流家庭に育った若者たちの日常を主に描くというものです。

その代表作であるノア・バームバック監督の『フランシス・ハ』(2012)の演技と脚本がメジャーで注目を浴び、『レディ・バード』(2017)で確固たる地位を築きました。『レディ・バード』はサクラメントに住む、将来に悩みつつトンガッた風に生きる少女を中心に描いた青春スケッチの佳作です。