グローイング・アップものの佳作

リアルな世界に来たバービーは自分がオールドスタイルの遊び道具に過ぎなくなっていること、持ち主の母親が現実逃避の道具として遊んでいたことを知って衝撃を受けます。

かたやケンはバービー世界では添え物的だった男の子キャラが現実世界では我が物顔で振る舞っている、マッチョな存在であることを知るのでした。先にバービー世界へ帰ったケンは“現実にいる嫌なオヤジ”そのものに振る舞い、男仲間を集めて男性優位社会に変えてしまいます。バービーは自分たちの世界を取り戻そうとする……。

このように『バービー』は、悩める女性が忘れていた自分本来の素晴らしさを知り、社会を変え、己も成長するというグローイング・アップものの佳作になっています。さらにキラキラしたグリッターなバービー世界のビジュアルも、少女期に夢中になった感じを再現していて大きな魅力の一つになっています。

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レバノンやクウェート、アルジェリアで上映禁止になったのは炎上とは関係なく、各国政府が推奨する女性像に反しているというものでしょう。煌びやかな人工的・幻想的なアメリカ文化のビジュアル、数々の性差あるあるネタを取り入れた笑い、母性的な優しさのある結末などが気に障ったのだなと理解できます。

一方で同じイスラム圏でもサウジアラビアやアラブ首長国連邦で公開されたのは変わりゆくイスラム圏の現実も窺えます。 

このように『バービー』は一定の国々や男たちを怒らせるに足る、巧みな作りの映画です。是非、未見であれば先入観なしに触れてほしい作品です。