手仕事の温かみを感じさせてくれる

とにかくロシアの地方都市の寒さと暗さ、貧乏を隠さない、うら悲しい街なみが『バービー』とは対照的です。

ラウラがレズビアンである自覚からリョーハを一度は拒むものの、性差を超えた恋愛とも違う感情(色恋を超えた濃厚な友愛のようなもの)で結びついていくドラマは胸を打つものがあります。リョーハの母と大酒を飲んで列車に乗り損ないそうになったり、互いの似顔絵を描いて遊ぶ場面のキュートさも必見です。

恋を失ってしまった人と過酷な労働を背負わなくてはいけないアウトサイダー、性差と国籍の違う奇妙なカップルが僻地中の僻地へ行って見つけたもの。観る人の胸にそれぞれイメージすることが違う、しかし観客の想像で補う隙間の多い映画になっています。

その隙間の魅力は作り込まれたハリウッド大作にない、手仕事の温かみをも感じさせてくれるでしょう。