三日坊主の克服方法

かつて、掃除のプロに取材をさせていただいたとき、「掃除は、汚れていなくても毎日します」と教えてもらいました。当時、掃除ができなかった私は、このひと言で、掃除ができるようになりました。毎日やるからこそ、隅々まで丁寧に掃除しなくていいのです。ちゃちゃっと掃除機をかけ、今日取り残したホコリは、明日取ればいい……。

『歳をとるのはこわいこと?――60歳、今までとは違うメモリのものさしを持つ』(著:一田憲子/文藝春秋)

若い頃、編集者に「イチダさんは、三日坊主だからね」と言われ、仕事がこなくなったことがあります。私は大層落ち込んで、どうしたら三日坊主をやめられるだろう?と真剣に考えました。

でも、どんなに「やめよう!」と決意しても飽きるものは飽きる……。そして、そんな自分の飽きっぽさがまたバレるのが怖かった……。友人にそんな秘密を相談したら、「飽き性だから、新しいことを見つけて書けるんじゃない?」と言われて、ハッとしました。そうか! 無理してやめなくてもいいんだって。

そんな私が、50歳になって見つけたのが、「毎日やる」と決めた方がラクなこともある、ということです。同じことを繰り返す=ルーティンにする、ということは「頑張ってやる」という意識のレベルから、「何も考えないでやる」という無意識のレベルへ、フェーズを変える、ということです。

枕カバーを洗って枕を干す。朝起きたら、ポッドキャストを聴きながら掃除をする。私のこのふたつの習慣は、ほとんど何も考えず、自然に体が動くことばかり。意志の力はもろいものです。「努力して」とか「頑張って」という土台の上では、「続ける」ということが逆に困難になることを知りました。