純粋な生き物だから守ってあげたい
英和 考えてみれば、佳子ちゃんと結婚して30年以上、お金の心配をしたことがまったくない。
佳子 それはかずくんが一生懸命働いてくれているから。依頼された仕事は、スケジュールが空いている限り、すべて断らずに引き受けるでしょう。
英和 呼んでいただいたらありがたいから、どんな役でもやらしてもろうてます。
佳子 かずくんのことをすごいなあと思うことがあって。それは、仕事の内容や相手に対して優劣をつけないところ。売れっ子の監督だろうがどんなお相手だろうが、分け隔てがまったくない。
どんな仕事でも真剣に取り組んで、終わったことに関しては、グチや文句をいっさい言わない。だからこれだけ長く仕事をいただけているんだろうなと思う。
英和 いや、なんも考えてないだけ。(笑)
佳子 ううん、「何も考えない」なんて、普通の人にとっては難しいことなんだよ。何も考えてないと本人は言うけれど、行動に惚れるときはよくある。昔、海外旅行で乗った遊覧飛行機の中で、私が急にトイレに行きたくなったときがあったじゃない?
英和 ああ、あのとき。
佳子 トイレがない小型のセスナ機に乗った途端に尿意を感じて。「がまんできない」ってかずくんに言ったら、他の乗客に謝りながら後ろのほうに簡易トイレみたいなのを作ってくれて、「ここで、しい」って。普通なら、「ちょっと我慢しろ」と言うとか、舌打ちのひとつもするところでしょう。
英和 いやいや、もう仕方ないから、「ここでどうぞ」と。
佳子 何も考えずに、そこまでできるのがホントにすごい。逆に、こちらが何かしてあげたときは、すぐに「ありがとう」って返してくれるし。
英和 「ありがとう」と「ごめんなさい」は、スピード勝負と思ってます。でも、「ごめんなさい」が速すぎて、何に対して謝っているのかわからん、って怒られるときもあるけど。(笑)
佳子 30年、惚れたところはお互いに変わらないね。かずくんは、傷つくと、とことん落ち込む人なんだけど、愛情を注いであげればあげるほど元気になっていく。何事に対しても純粋すぎるほど純粋。だから「この不思議な生き物を守ってあげたい」と思っちゃうんだよね。(笑)