大学のガバナンスのあり方について
――日大は悪質タックル事件も今回も、理事会の混迷ぶりが漏れ伝わってきます。なぜガバナンスが機能しないのでしょうか?
日大の詳細を知る立場にないので断定的なことは言えませんが、日大に限らず、大学のガバナンスのあり方については様々な意見があります。一般論として、最高意思決定機関である理事会の役目は、法人全体の管理・監督と重要な意志決定。そこで決まった方針の下、具体的な執行にあたるのが、学長をはじめとする大学執行部です。理事と学長が担っている役割は本来、異なるわけです。
たとえば大学に所属する学生や教職員が不祥事を起こした場合、仮に学長や事務局などの執行部が、大学に都合の悪い情報を隠したがっていたとしましょう。そんなとき、学園が背負っている社会的な責任や学園全体に与える影響などに鑑み、より高い視点で、問題の解明や社会への説明責任を果たすよう命ずることができるのが理事会です。もちろん理事たちにも色々な考えはあるでしょうが、執行部と異なる立場で議論できる仕組みを持つことは、学校法人が社会に対して責任を果たしていく上で非常に大切です。
このように両者は緊張感のある関係性で、役割分担を行うべきとされています。しかし実際には、日本の多くの大学で学長や学部長などの教職員が理事を兼任しており、監督役と執行役が明確に分かれているとは言えない状況です。日大もそうですね。
平時はそれでも良いでしょう。しかし不祥事が起きた際、必要な処分を下すべきときに下せない、組織風土を変えられないなどの機能不全に陥ることもあります。報道を見る限り、今回の日大は、まさにそのような課題を抱えているように思えます。重要な情報がトップに上がってこなかったり、理事会のメンバーも一緒になって不祥事を隠そうとしてしまったり。このあたりにガバナンスの課題があるのではないでしょうか。
健全に問題解決ができる大学もあるとは思いますが、不祥事が起きた際、日大のようにガバナンスの混乱が起きうる大学は他にもあるかもしれません。