自動改札機は検問だ
チケットはすでに予約しているのに、あの機械は一向に私を通してくれやしない。乗車時間も刻々と近づいている。ここはおばさん精神を発揮しようと、駅員にSOSを出した。
「あ~、お客さん、東京駅に入るときに私鉄のアプリで入りました? 原因はおそらくそれです。その清算をしていると、長蛇の列に並んでしまうことになるので、連携を切り替えましょう。入場時の清算は降りた駅でできます」
みなさま、入場時と『EXアプリ』は同じものする設定が原則です。駅員にアプリ操作を教えてもらい、たどたどしく操作していると
「ちょっと貸してもらってもいいですか?」
と、素早く操作を完了させた駅員。もう私もこの老化域まで達してしまったか……と年の瀬に現実を突きつけられながら、スマホを受け取って、いざ、自動改札へ。もう大丈夫だと安心してスマホを機械にかざすと「ピンポン!」と、またもやエラー音が発生した。プロが操作したのに何故……。
「あれ、ダメでした?」
駅員が近づいてきてくれた。考えられる原因を伝えながら、またスマホは彼の手に奪われた。「なんだろう?」と真剣に考えてくれている。私ときたら、スマホの推しの待ち画や、趣味のアプリがこの若い子にバレたら恥ずかしいと、余分な心配ばかりをしていた。
「すみません、ちょっとスマホを借りてもいいですか?」
まずい事態を察知したのか、駅員は私の承諾を待たずに改札の窓口に向かって走っていった。どうやら機械を使って予約状況を調べるらしい。ポツンと改札脇に取り残された私は、改めて周囲を見渡した。
大混雑の自動改札は「ピンポン!」が、クイズの回答音のように、あちこちで連続して鳴っている。引っ掛かっているのは私と同年代か、上の世代の人ばかり。慣れないスマホ予約、撮り忘れた切符、入場時の清算、外国人観光客の乗り間違いなど、原因はさまざまだ。中には「もう間に合わない!」と焦る家族もいた。そう、改札口はちょっとしたカオス状態。ふと「ここまでの切符や清算もお願いします!」と、大声でアナウンスをしている駅員たちを見ると、全員、若かった。混雑に備えておそらく10人以上いたと思うけど、スマホ操作と英会話に長けた人たちばかり。なるほど、JRもそんな対策を講じていたのか。
「お客さん、新幹線の予約、キャンセルをしてます?」
駅員が戻ってきた。実は私、最初の予約をキャンセルして、再度予約をしていた。出発前日にアプリを見直すと、窓際の席が空き始めていたのだ。
「たぶん、それが引っ掛かっちゃたみたいなんですよ。大丈夫、もうぜんぶクリアにしました。改札は通らずにホームへ行ってください」
なんとつまらない欲が「ピンポン!」を鳴らしていたとは……。駅員に何度もお礼を言って、やっとホームへ向かう。ここまでに10分以上、時間が経過していた。もし早めに東京駅に着いていなかったら、予約した席に座れなかったかもしれない。振り返るともう最後尾が見えないほど、改札に列ができていた。
改めて、自動改札機は若さとマナーを調べられる検問だと悟った年末だった。