(写真はイメージ。写真提供:photoAC)
独身、フリーランス。世間から「大丈夫?」と思われがちな40代の小林久乃さんが綴る「雑」で「脱力」系のゆるーいコラム。「手抜き」のテクニックを勧めるだけではなく、年齢を重ねたことで得た「脱力」による省エネによって、次へのエネルギーを担保していこう! というのが、本企画の主旨。第10回は「新幹線の改札はおばさんに厳しい」です。

はからずも年末混雑時に帰省

2023年の12月中旬までは年末年始、地元・静岡県への帰省予定はなかった。新幹線の大混雑の波に、突入していくことが辛い。それなら2月の空いている時期に帰ると、母親には伝えていた。

そもそも混雑時に移動をしたくない、というのも、独立をした理由のひとつ。会社員の休暇とは外れた、閑散期にゆったりと移動をしたい。上京してからも元旦に帰ることがほとんどで、ゴールデンウィークやお盆といった連休を利用して帰ることは、あまり経験がない。

ところが昨年末、父親が持病の悪化で緊急入院となってしまった。退院は年明けで、年末年始は病院のベッドで過ごすことになるという。そうなると、母は生まれて初めてのロンリーカウントダウンを迎えることになる。独身生活に慣れている娘からすると、大したことのない話。でも一人暮らしの経験がない母にとって、寂しいことは間違いない。

「お母さん、お正月一人で寂しくないの?」

「仕方ないよね。これからこういうこともあるかもしれないし、何事も経験よ」

そんな母を不憫に感じた私は、10年以上ぶりに年末帰省を決めた。正月に書こうとしていた溜まりに溜まった原稿を、ハイピッチで書き上げた。深夜作業は辛い40代なので、朝5時に起きて、キーボードを叩きまくった数日間。私はこんなにも母親思いだったのかしら。

仕事を終えて12月31日の日中に帰省することを母に伝えると「混んでいるから無理をしないで」と言われたけれど、新幹線のチケットはアプリで入手済み。数人単位で移動するのは厳しいかもしれないが、単身移動というのは最終的にどうにかなる。ギリギリで席を手離す人もいるので、一席くらいは確保可能だ。結局、母と晩酌をしながら紅白を見て年を越し、元旦の能登半島地震の揺れを体験した。やや無理をしたスケジュールだったけれど、本当に帰って良かった。

と、今回は母親孝行物語を綴りたいのではなく、ひさびさに体験した、混雑期の新幹線の移動について報告をしたい。旅慣れていて、既知の情報だという人には申し訳ないが、私にとっては「こんなことがあるのか……」と、目から鱗の体験ばかり。おそらく同年代の読者が多いはずの婦人公論.jpで、まずは情報を共有せねばという衝動にかられた。そう、今回はおばさんによるおせっかいエッセイです。

元日に地元の五社神社にて、新年のご祈祷。この後に震災が起きてしまった。どうか1日も早い復興を