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税金の控除や医療費の自己負担額を減らすなどの優遇制度を活用できていない人は多い、と税理士の板倉京さんは言います。どのタイミングでどんな制度が使えるのかを知っておくことが、老後のお金対策の第一歩です(構成=村瀬素子 イラスト=古谷充子)

情報は向こうからやってこない

税理士として相談を受けるなかで日々感じているのは、税金や社会保障などの制度をよく理解していない人があまりにも多い、ということ。

日本には税金の控除や特例、医療費の自己負担額軽減など、私たちにとって得になる、さまざまな制度があります。けれど、自分から申請しないと活用できないものがほとんどです。

役所や税務署から、「あなたは、この制度を使えば得ですよ」と案内してくれることはまずありません。そのため知識がないと、税金の控除を受けられないなどの事態が発生してしまうのです。

一般的に65歳以降は、貯えと年金で生活する《ストック世代》に入ります。しかし、社会保険制度が改定されるたびに、高齢者の保険料や医療費の負担は増え続けているうえ、近年の物価高もとどまるところを知りません。

国は賃金上昇の政策を打ち出していますが、恩恵を受けるのは働いている世代だけ。ストック世代ほど、「節税する」「自己負担額を減らす」「受給額を増やす」制度を知って活用することが、損をしないためのお金対策の第一歩だと私は思います。

まず、定年退職前であれば「年金」と「退職金」、定年退職後は「医療費や介護費」「家(不動産)」「相続」で受けられる優遇制度を知っておきましょう。次ページから、具体的な制度の内容と使用方法、メリットをご紹介していきます。

とはいえ、これらは個々の状況で使える制度や損得の目安が異なるうえ、複雑な公的制度を一般の人がすべて理解するのは難しいもの。

まずは、こんな制度があるということを知っておき、役所や税務署などの専門機関で「こういう制度があると聞きましたが、私は使えますか? 手続き方法は?」などと、理解できるまで質問してください。公的機関も、制度を正しく使ってほしいという思いがあるので、親切に教えてくれるはずです。

皆さん、税金と社会保険料をたくさん払ってきたのですから、堂々と制度を活用しましょう。