規制緩和後も不採算路線が続けられる理由

なぜそんな一見効率の悪そうなやり方を続けるのか。ひとつは、路線バスという公共交通機関は、広い路線のネットワークがあることで価値が向上するためである。中心街から離れた場所を走る不採算路線であっても、その路線があることによって中心街の黒字路線も乗り継いで利用ができる。

また、バス事業者は不動産事業など関連事業を展開している場合も多い。大手バス会社の会社名自体がその地域で絶大な信頼を持っているのである。そんな中で、不採算路線をすべて廃止、なんてことをすると、「弱者切り捨てだ」と会社のイメージが落ち、結果として関連事業の売上も落ちてしまうかもしれない。それを防ぐための運行の維持という側面もあるだろう。

数十年かけてマイカーの台数は増加を続け、一方でバスの需要は減り続けた(写真提供:Photo AC)

しかし、現実にはバス事業者が不採算路線の維持をする義務はなく、路線の廃止は事前の届出さえすれば自由に行える。

また、2002年の規制緩和以前から不採算路線の廃止自体は可能であり、規制緩和後に極端に路線の廃止が進んだわけではない。利用の減少と共に数十年かけてじわじわと路線が廃止され続けているのが現状だ。