なぜバスは減便されるのか

マイカーが普及し、バスの需要が減少しているのは確かだ。その一方で、近年は運転士不足や燃料代の高騰という話題も聞く。

ただ、バスが減便や廃止される一番の理由は利用者が減少していることであり、そのほかの理由はあくまで副次的なものにすぎない。

運転士が不足していて、本当に追加の人員が必要であれば賃金を上げればよい*3。

『逆境路線バス職員日誌 車庫の端から日本をのぞくと』(著:綿貫渉/二見書房)

近年は価格の上昇に理解もあり、その人件費上昇分を運賃に転嫁しても、あまりにも高額と思える価格でない限り急激な利用者離れは起きないはずだ。

ただ、バスの運賃は気軽に上げることはできず、国土交通省の認可が必要であるため、より柔軟に運賃を変更できる仕組みが今後は必要だろう。

また、路線バスには本数・乗客ともに多い黒字路線もあるが、逆に赤字路線も多数ある。通常の企業であれば、黒字の事業に注力し、赤字部門は将来的な黒字化が見込めなければ撤退する、というのが合理的な考え方だろう。

では、バス事業においての赤字路線はどのような考え方だろうか。従来は需給調整規制という制度があり、国土交通省*4が許可した事業者のみ路線バスの運行が認められる方式になっていた。

そのため、新規参入がしづらく、事業者間の過度な競争が発生しづらい代わりに、運行を許可された事業者は責任をもってその地域での運行を担当する仕組みになっていた。

しかし、2002年にこの需給調整規制は廃止され、路線バス事業への新規参入が容易になった(規制緩和)。その半面で退出の手続きも許可制から事前届出制となり、路線の廃止もしやすくなった。

とはいえ、規制緩和が進んだ現在も、基本的には赤字路線も廃止はせず、黒字路線の利益を赤字路線に穴埋めをする内部補助を行い、運行を維持する考え方が一般的のようだ。

【*3】賃金を上げても人が集まらないのであれば本当に人員不足かもしれないが、まだその状況には達していないように思える。

【*4】旧運輸省