あのさママ、髪の毛ってさ…

「ママ伸ばしたら?髪」

「伸ばせるかな」

「伸ばせるでしょ、切らなきゃいいんだから」

「切らないでいられるかな」

「は?知らない」

「すぐに、切ってしまう。つい、楽だと思って切ってしまう。だけど、もしかしたら長い髪の毛の方が楽にキマるのかもしれない」

「そうじゃない?」

「今から伸ばしたら、いつ伸びるかな」

「知らない」

「知らないことが多いね」

「もういい?」

「何が?」

「この会話、もういい?」

「どうもね、美容院でやってもらった感じにならないのよ」

「あのさママ」

「はい」

「髪の毛ってさ、セットに時間かけないといい感じにならないよ」

「そうなの?」

「そうだよ」

「そうなんだ」

「知らなかったんだ。じゃあこれからやりなよ」

確かに、娘は学校へ行く前に小一時間鏡前に座る。よくまあ、その為に6時に起きるものだと感心する。わたしの中学生の時なんて、寝癖か、もしくは洗いざらしで、登校時間が自然の風ドライヤーの時間であった。今も、あまり変わらない。

本連載から生まれた青木さんの著書『母』