恋愛力に欠ける夫と30歳で結婚

その後、紆余曲折の末、今の夫と結婚したのが30歳のとき。実は、理系の夫は恋愛力がゼロに近いタイプで、長年、友達ではあったものの、恋愛相手として意識したことはほとんどありませんでした。

ところが、28歳で私がストーカー被害に遭い、仕事もすべて失い、心身ともに疲弊していたときに、私を全力で守って支えてくれたのが彼でした。当時、神戸の会社に勤めていた関西人の夫は、週末ごとに深夜バスで上京し、弁護士事務所に付き添ってくれたり、精神的に不安定になって泣いてばかりいる私に「落ちついて、冷静に考えなきゃダメだ」と適切なアドバイスもしてくれたりしました。そんな彼を見て、私自身「辛い現実にも、冷静に向き合える人なんだな」と尊敬しましたし、周りの友人や知人にも「こんなにいい人はいないよ」と言い含められて。その中にひとり、いい意味でおせっかいなおじさまがいて、「これから君たちはどうするんだ? 結婚するなら早いほうがいいよ」と後押ししてくれました。そのとき、たまたま一緒にお茶を飲んでいたのが、私が以前から「いつかここで結婚式をあげたい」と話していたホテルのラウンジだったのです。そのおじさまは中座して戻ってくると、「いま式場に行って、空いている日にちをチェックしてきた」と。(笑)その流れで、結婚式の日取りが決まったんですよ。

夫の場合、恋愛力は低い半面、生活力や問題解決能力はずば抜けて高い。料理はあまり得意じゃないのですが、後片付けは彼が率先してやっています。驚くほど記憶力がいいので、細かなゴミの分別や集積所に出す日にちも完璧に覚えています。洗剤も「もうすぐどれがなくなりそう」と、きちんと把握しているので、「洗濯用の洗剤がない!」って私が慌てても、「買ってあるよ~」と準備万端。何より、私がストーカーに遭い、仕事もすべて失ったときに「君の才能は、僕が一生かけて証明する!」と声を絞り出してプロポーズしてくれた人です。その言葉通り、夫は自分の仕事が忙しい時期でも20年間以上、妻である私の仕事をサポートしてくれています。夫のご両親は共働きだったので、お母さんが働く姿を見て育ったのも大きいかなと思います。

ちなみに、私の父は長男、しかも男尊女卑の風潮が強い土地柄に生まれ育ったので、母にも常に上から目線で接していました。そのためか、「妻は夫を立てるもの」という古い価値観が私のどこかに刷り込まれているようです。自著の中では、「これからは、経済的にもっと女性が男性をリードする社会になってもいいんじゃないか」と書いているにも関わらず、心の中ではなかなかそこまで吹っ切れない。やはり親の生き様や育った環境は、子の結婚観にも大きく影響するのではないでしょうか。

今、夫にはほとんど不満がないのですが、唯一問題なのが、彼が太ったせいでイビキがひどいこと。(笑)毎晩、ゴジラのようなイビキをかくので、結婚して2年目からは「夫婦別寝室」です。一緒に旅行に出かけても、2部屋とって寝室を別にしないと、私は一睡もできないんですよ。