地方公務員だった皆川さん自身は、見合い結婚と同時に仕事を辞め、家庭に入る。そして娘が生まれてからは“至れり尽くせり”の母親をやってきた。娘が大学卒業後に入社したIT企業は長時間労働の過酷な職場。当時は非常勤で働いていた皆川さんだが、終電がなくなった娘を心配して車で迎えに行ったこともある。

仕事を辞めて自由な時間のある現在は、家族のためにきちんとした食事を摂らせることが日課。毎日娘の出勤時間に合わせて起き、朝食の支度をして食べさせる。ダイエット中には野菜中心の弁当を持たせ、夜はビジネススクールから帰ってきた娘に食事を用意。「貯金しなさい」との条件で、長女と長男(36歳)からは、食費などのお金はもらっていない。

結婚相手の候補選びには、皆川さんも夫も慎重だ。ある男性は自称「マンション経営」というが、本当はどうなのか。夫が建物名を検索して調べた。実際は小規模なアパートであることがわかり、不安になる。また別の男性は身上書に高額の年収を書いていたものの、勤務先の情報を集めると、そんなに給料をもらっているとは思えなかった。

それでも皆川さんは、代理婚活をやめれば、娘が「親もあきらめたんだ」と思ってしまうのがかわいそうだという。

「親として何ができるかを考えたら、続けるしかない。親にとっても、いろいろなことを考えるよい機会になっています。子どもの年代に合わせて関わり方は変化するけれども、母親業は終わらない。娘を大事に思ってくれる男性が現れたらうれしいけれど、卒業はしません。結婚しても、母はずっと見守り続けるものだと思います」

それぞれの母親にある、いつまでも関わっていたい、関わっていなければならない事情。娘や息子たちの目には、そんな母の姿はどのように映っているのだろうか。