日本で重んじられているもの

震災時における日本人の沈着冷静な様子は、2011年の東日本大震災の発生時にも世界各国のメディアで話題になった。

原発事故も併発する規模の大震災でありながら、人々は怒りや不満に煽られ暴徒と化すわけでもない。個人主義が社会のベースとなっている国の人たちには、こうした心理が俄かには呑み込めないらしい。

(撮影:ヤマザキマリ)

実際、情動と抑制が保たれた、日本人に顕著なこうした精神性は、アメリカやブラジルなど過去に日本人が移民した国々でちょっとした脅威と捉えられていた場合もある。

宗教観の違いなど差異の理由はさまざまだと思うが、やはり日本のような島国では「自分が、自分が」という個人主義的な振る舞いは、社会をまとめるうえでは理想的手段にはならない。

日本は法が宗教的な戒律や理念と紐付いていないぶん、社会の流動的な兆候や空気が重んじられている。そうした心理構造が災害などのパニック時に顕在化するのだろう。