どちらが良い悪いという話ではないが
新年に能登で発生した地震は、知人が暮らす場所が震源地に近かっただけに自分も大きな衝撃を受けたが、ここでもまたつらさと悲しみの底にあっても、静かに現状を受け入れている人々の様子が世界中のテレビに映し出されることとなった。
そして、その直後に起きた羽田空港での衝突炎上事故でも、乗客たちが全員速やかに機体から脱出したことが世界中で絶賛されたが、イタリア人の夫曰く、「自分ならどんな指示をされようと鞄を機内に置いていくなんて無理。危機的状況下こそ他人の指示なんて信じられない」のだそうだ。
どちらが良い悪いという話ではない。ただやはり、地球に暮らす人の人間性が、一筋縄ではいかないほど多様であることは知っておく必要がある。
羽田空港のニュース映像を見ながら、「もしここに自分がいたら……」という夫の呟きにそんなことを考えさせられた。
『歩きながら考える』(著:ヤマザキマリ/中公新書ラクレ)
パンデミック下、日本に長期滞在することになった「旅する漫画家」ヤマザキマリ。思いがけなく移動の自由を奪われた日々の中で思索を重ね、様々な気づきや発見があった。「日本らしさ」とは何か? 倫理の異なる集団同士の争いを回避するためには? そして私たちは、この先行き不透明な世界をどう生きていけば良いのか? 自分の頭で考えるための知恵とユーモアがつまった1冊。たちどまったままではいられない。新たな歩みを始めよう!