隣の芝生は青く見えても、人それぞれ
唯一、「素の自分を認め、雇ってくれた!」と実感できたのが、派遣の仕事のかたわら副業でやっている、時給900円の学童保育のアルバイトだ。若い頃、親に勧められるまま取得した教員免許が役立った。何より、子どもたちと触れ合える時間が愛しい。
「子どもが大好きなんです。フルタイムの派遣の仕事はこの6月で定年になりましたが、学童保育の仕事の定年は来年の3月。残り少ない間、これまで週1しかできなかった仕事に、平日も携わりたいし、今後は地域の子育てを手伝うファミリーサポートもやりたい。次のアルバイトも見つけなければならないけれど、派遣で多業種を経験したので、『なんとかなるだろう』と、悠長に考えています」
最近、知人から言われる言葉は「あなたは子どもがいないし、貯金がたまるばかりで老後資金もバッチリでしょ? 羨ましいわ~」だ。でも美咲さんには、リストラされた会社の退職金しか残っていない。
「たしかに、お酒だ旅行だと散財する癖があるのは否めません。でも実は30歳の頃、父の会社が倒産して。当時の貯蓄全額を差し出したうえ、私名義で借金もし、小さな一軒家が買えるくらいの負債を抱えてしまったんです。隣の芝生は青く見えても、人それぞれ、背負っている人生があるんですよ」と苦笑する。
定年を迎えたばかりで、これから受け取れる年金受給総額はまだわからない。老後に向けて経済面の不安はないのか。
「人生100年時代とはいっても、明日死ぬかもしれないでしょ? だったら、ギチギチに切り詰めて貯蓄するより、今日を楽しみたい。節約といえば、休日に図書館に行き、自宅の電気代を浮かす程度。私にとっての財産は、何でも率直に語り合える友達かな。飲んで遊びますよ(笑)」