現在は悠々自適に暮らしているシングル女性たち。しかし、過去には離婚や、借金を抱えるなど、さまざまな苦難がありました。彼女たちはどのように、その難局を乗り越えてきたのでしょうか。夫と離婚し、息子を連れて実家に戻った由美さん(仮名)の場合はーー(取材・文=武香織)

「ご両親の夫婦関係を見直して」と指摘され

「神経質で細かいことをネチネチ言う夫と、倍にして言い返さないと気の済まない私は、結婚当初から喧嘩三昧でした。約10年前、息子が中学2年生のときに不登校になって、カウンセラーから『ご両親の夫婦関係を見直して』と指摘されたのをきっかけに、離婚に踏み切ったんです」

専業主婦だった由美さん(61歳・仮名)は、夫に息子の養育費・毎月4万円の支払いだけは約束させ、財産分与で得た約100万円を手に、息子とともに埼玉県から福島県にある実家へ戻った。

仕事が見つからず困っていると、不動産業を営む親戚から「食堂だった物件が空いている。家賃5万円、敷金なしでいい。喫茶店でも開いてみないか?」という助言を受ける。由美さんは二つ返事で飛びついた。

「喫茶店経営は、子どもの頃からの憧れでした。自分で壁にペンキを塗り、木材を組み立てて棚を製作。リサイクルショップでテーブルや椅子、コーヒメーカーや食器などを購入してね。なんだかんだで財産の半分の50万円が一気に消えたけど、もう楽しくて楽しくて」

開店当日は、近所の人たちが大集合し、盛況のうちに営業を終えた。ところが翌日から一変、閑古鳥が鳴く状況になったそうだ。

「ご近所さんのほとんどが、足腰の弱いお年寄りだったというのが大誤算でした。でも毎日、来客を見込んで食材を用意しておかなければならないし、家賃と光熱費は固定だし。出費ばかり積み重なった挙げ句、残りの50万円もパー。たった3ヵ月間でお手上げ、閉店に至りました」

ちょうどその頃、幼馴染みから「健康食品の訪問販売を、一緒にやらない?」という声がかかる。聞けば、毎月10箱の健康食品が無料で送付され、1箱1万円で売れば、70%がマージンとして入るとか。健康食品ならお年寄りにもウケると踏んだ由美さんは、その誘いに乗った。