腹が立つより、情けなくて

初月は、近所の人たちが面白がって購入してくれたため仕入れを追加、30個売り上げて、合計21万円も稼いだ。けれど、3ヵ月目に送られてきた10箱はいっこうに売れず……。焦って息子の友人のお母さんたちにも営業したので、息子に「カッコ悪いことするな!」と怒られたことも。

「で、翌月分からの配送停止を依頼すると、『余った分は買い取りです』って……。あっ、これは詐欺だ! と気づきました。幼馴染みに連絡したら、『私も騙された。ごめん、実は仕事仲間を増やすと、5万円もらえたの』。良かった~と安堵しました。だってそれを先に聞いていたら、私も誰かを誘い込んでいたかもしれないもの。結局、訴訟を起すのも面倒で、親から10万円を借りて完済。腹が立つより、情けなくてたまりませんでした」

しかし由美さんは、転んでもタダでは起きなかった。喫茶店経営と訪問販売の経験から、「高齢者の多い町で商売するなら自宅訪問」と確信。喫茶店だった場所を借り直し、宅配弁当屋を開業した。3人のバイトを雇い、宅配ついでに顧客の体調を尋ねたり、買い物も手数料100円で引き受けたり。そんな地元密着型の形態が当たった。

「息子も独立し、約2年前からは毎年200万円ずつ貯蓄できるようになりました。近い将来、実家を改装して喫茶店兼宅配弁当屋をやるつもり。『老後』なんてまだまだ先よ(笑)」

 


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