「持ち物が多すぎると自分が溺れてしまいますし、余計なものを省くことで、自分にとって大切なことも見えてくる」

万全を期していると思っても

こうして毎日機嫌よく過ごしていますが、振り返れば思い通りにいかない時期もありました。私が38歳のときに父が亡くなり、その直後に継母がアルツハイマー型認知症を発症。と同時に、それまで親に丸投げだったお金の管理が、ドーンとのしかかってきたのです。

自分がいくら持っているのか、税金をどう支払うのかさえわからない状態でした。両親のために26歳で建てた家があるから安心だと思っていたら、こんなに早く父の死と継母の病に直面するなんて。万全を期していると思っても、人生に盤石なんてないのだと痛感しました。

大雑把な私にとって、この現実は受け止めきれないほど大問題! でも、どんなに大きい問題も、崩して小分けにすれば解決できると気がついて。経理に関しては、レシートを日にちごとに管理して税理士に渡したり、銀行口座を整理したり。本当に初歩的なことですが、目の前の問題に一つずつ向き合っていきました。

そして、当時持っていた山小屋やリゾートマンションは処分。両親の家も、病状の進む継母が管理できないことは明らかでした。いっそ誰かに活用してもらったほうが家も喜ぶと考え、思い切って手放すことに。

引き渡しの際、「いいことがたくさんあった家なので、どうぞお幸せに暮らしてください」と直接お伝えできたこともあり、まったく後悔はありません。

あのとき不動産をできるだけ少なくして、身軽に生きていく方向に舵を切ったのは正解でした。持ち物が多すぎると自分が溺れてしまいますし、余計なものを省くことで、自分にとって大切なことも見えてくる。着物など女優として必要なものにはお金をかけていますが、自分の生活はごく自然にダウンサイジングすることができたのです。