「収録前は毎回ストレスで胃が痛くなるほど。ところが終わると高揚感があって、〈あれ、 私けっこう楽しんでる?〉と気づくわけです」(撮影:浅井佳代子)
現在発売中の『婦人公論』2024年3月号の表紙は、女優の名取裕子さん。女優としてだけでなく、近年はクイズ番組でも活躍。どんな仕事にも明るく取り組む姿が印象的な名取裕子さんですが、後ろ向きな一面もあると言います。物事を前向きに捉えられるようになったきっかけは――(撮影=浅井佳代子 構成=平林理恵)

女友だちが最高の宝

「いつも明るいね」と言われるのですが、私は本来、そこまでポジティブな性格ではありません。3歩進んで4歩下がるくらいには後ろ向き(笑)。そんな私が日々楽しく過ごせているのは、仲間――とくに女友だちのおかげです。彼女たちは最高の宝。学校や仕事、趣味を通して出会った友人がことあるごとにわが家に集まり、女子会を開いています。

私は14歳で母を亡くし、その頃からお勝手を任されてきたので、料理は得意なんです。これまでお世話になったロケ先の農家さんや漁師さん、全国の知人友人が、季節の新鮮な食材を送ってくださるから、わが家は「道の駅」状態(笑)。せっかくのお心遣いを、絶対に無駄にしたくない。それでいつも、友人に声をかけて食べに来てもらうのです。

先日も、立派なメバルが8匹も届いてどうしようかと思案していたら、友人から電話がありました。彼女は昨年ご両親を見送り、息子さんと二人暮らし。ところがお正月から息子さんは恋人と出かけてばかりで、「私、《ぼっち》になっちゃったわ」。

そこで、「私なんて、母を亡くしてからぼっち歴52年よ。先輩に聞きに来なさい。一緒にご飯食べよ!」と誘い、手料理を振る舞いました。寂しいときは、おいしいものを一緒に食べるに限ります。