享年88。眠るように亡くなった祖母

それともうひとつ、僕にとっては仕事がちょうどいいストレス発散の場になっていました。大声で叫んだり暴れたりする芝居が多いので、気分がスッキリするんです(笑)。どの作品も視聴率が良く、祖母が喜んでくれたのも励みになりました。朝早く家を出て、夜遅く帰宅して、夜中に起きて祖母のケアをするのは肉体的には大変でしたが、精神的にはさほど苦ではなかったです。

その後、僕らはアパートからマンションに引っ越したのですが、そこで僕の留守中に家を出た祖母が迷子になり、警察に保護されるという出来事がありました。おばとも話し合い、祖母の介護のために僕と祖母とおば一家の計5人で一軒家に住むことになったのですが、実はそこからが大変で。全員が24時間、祖母と向き合うことになったため、お互いの精神的負担が大きくなってしまったのです。

人間は疲れると、つい厳しいことを言いがちになります。身内に対しては特にそうですよね。祖母の認知症が少しずつ進んできたこともあり、話し合いの末、特別養護老人ホームに入居してもらうことに。祖母が倒れてから、ちょうど10年目のことでした。

最初は特養ホームに入ってもらうことに心苦しさがあったのですが、プロの方の介護はさすがですね。手厚いケアに安心したのか祖母にも笑顔が戻り、僕らも祖母に優しくできるようになりました。本人にとっても家族にとっても、良い選択だったと思います。

祖母はそこで10年お世話になったのち、最期は眠るように亡くなりました。ちょうど部屋に誰もいないタイミングだったのですが、僕としては苦しまずに逝ってくれたのが何よりだったなと……。享年88。大往生だったと思います。