「セリフの練習をしながら、『人生は厳しいけれど、本当に素晴らしいものだよ。そして、いつからでもやり直せるものなんだよ』と、エールを送られているような気持ちになった」

ミュージカル『クリスマス・キャロル』に出演

還暦を迎えて初の舞台が、11月19日から始まるミュージカル『クリスマス・キャロル』です。僕が演じるのは守銭奴のスクルージ。オファーをいただいたときは、主演ということはもちろんですが、年齢や経験を重ねないとできない役だけに「そういう役を演じられる役者だと思っていただけるようになったのか」と嬉しく思いました。

スクルージはお金持ちではありますが、家族もおらず、孤独な生活を送っています。一方的で人の話を聞かず、相手を否定してばかり。こういうキャラクターは、台本を読んでいてもセリフ覚えが大変なんですね。なぜならお芝居が一方通行だから。

セリフというのはキャッチボールのようなもので、こちらがこう言って相手がこう返す、というやり取りがあって初めて成り立つもの。そうでない場合はプツンプツンと言葉が切れてしまって、なかなか頭に入ってこないのです。

しかも彼のセリフは「うるさい!」とか「くだらん!」という相手を否定する激しい言葉が多いので、自然と顔の筋肉がこわばってしまって(笑)。彼が人の優しさに触れて変わっていく2幕になると、徐々に表情も柔らかくなっていくんですけどね。

スクルージにとって忘れられない女性を始め、舞台に登場する3人の女性を演じるのは、昔と変わらずエネルギッシュでキュートな杉本彩さん。まだ公式動画の撮影現場でご挨拶をしただけですが、本格的に稽古でご一緒するのが今から楽しみです。

セリフの練習をしながら、「人生は厳しいけれど、本当に素晴らしいものだよ。そして、いつからでもやり直せるものなんだよ」と、エールを送られているような気持ちになった『クリスマス・キャロル』。人は1人では生きていけず、心の交流は何よりも大切です。寒い季節、ぜひこのミュージカルを観て、人のあたたかさを感じていただけたら嬉しいです。