千葉雄大監督『ハルモニア』

『ハルモニア』艶のある映像美にも注目 ©︎wowow アクターズ・ショート・フィルム 4

冒頭、俳優である語り部、よしあき(一ノ瀬颯)がインタビューを受けている。このシーンの画面は本編のドラマと関係なく素晴らしい。背景の暗緑がかった色艶、語る一ノ瀬の茶系の衣装が、これから始まることへの引力がある。撮影の花村也寸志と照明の志村昭裕の技術の賜物だ。

 

映画はよしあきの仲間、キャリア職だろうゆりねえ(ヒコロヒー)、子を授かったもんちゃん(工藤遥)、ゲイであるさと(山崎樹範)が集い、語り合うことで前へ進んでいく。仲睦まじい4人の点描を序盤に見せ、さとの母が事故死したことで、再び葬式の後に皆が集まる。

互いに抱えた不安、出産や不妊、性差などを語り合う。昨年亡くなった脚本家・山田太一のドラマを思い出す展開だが、特定の言い回しや抑揚の規制もない(山田ドラマにあるような関係の解消というヤマ場も排除される)だけに、現代的なナチュラルさを意図した会話劇が進む。フワッと、人の善性を肯定し、良い意味で青臭さを残した作りに仕上がっている。

こうしたスタイルの劇は、非常に俳優陣に負担のかかるものだ。それを一ノ瀬のキュートさ、工藤の揺れ、ヒコロヒーの不思議な貫禄が推進力になっているのだが、特筆すべきは万年青年俳優、山崎の芸達者ぶりだろう。

一ノ瀬颯とヒコロヒー。出演陣のアンサンブルは必見 ©︎wowow アクターズ・ショート・フィルム 4

数多くのドラマと映画に出演経験のある懐深さと、子ども番組『ワンワンパッコロ!キャラともワールド』での優しいお兄さんぶりなど、演技と人柄が寄り合ったことで、今回は短編ながら当たり役を演じたと思う。

本作は、こうした4人の演者から良質のパフォーマンスを引き出した千葉雄大の演出力を楽しむ作品だろう。